エスクードとは昔のスペインとスペイン語圏の中南米諸国とポルトガルで使用されていた通貨単位です。
古スペイン金貨のイメージとそうした時代のロマンや冒険心をイメージして名付けられました。
というメーカー公式ツイッターの解説は、車名の由来において間違ってはいませんが、「通貨単位です」と言い切ってしまうのはいささか乱暴。ましてやこの三行目の記述はもう強引な繋げ方したもんだよと、デビュー当時から感じています。
言葉の由来をもう少し紐解くと、エスクード(ESCUDO)が「楯」あるいは「盾」を意味するスペイン語圏の言葉だということがわかります。そこから通貨単位に流れていくのには、中世ヨーロッパ以前から楯に描かれた紋章との繋がりがあるのではないかと思います。この紋章をエスカッシャンと呼ぶのですがそっちまで紐解き始めると長くなるのでそれは別の機会に譲ります。
要するに、エスクードという単語には、通貨単位と古スペイン金貨以上の深みがあるということです。
そこで、どうせ強引にこじつけるなら、楯があるなら「剣」もあるだろうよ。という着眼なのですが、こちらはスペイン語で表すとエスパーダ(ESPADA)。その昔、といっても50年前から40年前にかけて、その名を冠した自動車を、ランボルギーニが作っておりました。
V12気筒4000ccという「いかにも」な、しかし4シーターのグランツーリスモでした。この車のデザインは、マルチェロ・ガンディーニによるものです。
お、っとガンディーニが出てくるわけです(作為的展開)。30周年記念企画webに掲載した「エスクード誕生物語」に記されている通り、ガンディーニはカーデザイナー羨望の的ともいうべき巨匠。でもワゴンRにも乗っているという、割とスズキとはビジネスライクなばかりか、市販はされませんでしたがエスクードのレジントップのキャノピー(プロトタイプ)を手がけました。
奇しくもエスクードはエスパーダが生産中止された10年後に誕生するうえ、エスパーダ自体が日本国内でどれほど現存しているかもわかりませんので、まあそれ以前に「剣と楯」なんて発想で取り扱おうなんて車雑誌もなかったのよ。
カタオカデザインのエスクードとガンディーニ作のエスパーダ。そのシルエットは対極であり、それぞれその名をよく表しているように感じられます。