この人は世の中に何が起きても平然としてお腹をゆすって笑い飛ばすものだと思い込んでいました。でも、三月の震災のときには大いに消沈されたのだとか。それでも「この国はユートピアなのだから、きっと元の姿を取り戻せる」とも語ってくれたそうです。阪神・淡路大震災の後、長く鬱に陥っていたにもかかわらず、です。遡れば僕の場合「空中都市ゼロゼロエイト」に始まり、ずいぶん小さな頃から沢山のSF世界を通して科学や地学やいろいろな知識を読み取らせていただきました。
映画はどこを覗きに行っても駄作の極みという評しかありませんが、「さよならジュピター」のノベライズは今でも読み直します。「日本沈没」には怖さと憔悴漂っていたけれど、ひょっとするとその数百年後の日本人は太陽系そのものに生活圏を築いていたのかもしれないと勝手に結びつけ、そんな目に遭った民族だからこそ太陽系の破滅に瀕しても勝気だし、宇宙開拓の世界自体が快活に書かれていたのです。もっとも主人公の本田英二は試験管ベビーなんですが、それだって日本人の遺伝子を絶やさぬ努力の果てなのかもしれないし。
Bye-Bye,Jupiter 大きな友達。さよなら小松左京さん。