リサイクルの六次産業化を掲げるJACの真野孝仁社長が、個人的な意志で「悟道の里山」という震災復興の情報発信地を作り上げました。岩手県遠野市の山林に点在する曲り家や庫裡や寺院を丸ごと取得し、東日本大震災や広島土砂災害、熊本地震などの復旧復興に奔走したボランティアの人々が持つ知見、ノウハウ、経験談を後世に伝える場所となり、寺院はもとの宗派から切り離して無宗教とすることで、あらゆる災害で亡くなった人々の供養参拝を自由にしてもらうのだそうです。
「私自身も津波で家や社屋を失いました。瓦礫処理にはボランティアでかかわり、沢山のボランティアの人々と知り合い、対話の機会を得たのです。彼らは皆、各地の活動で経験したことを語り継ぎたいと願っているんです。それならばそのような場所を作ろうと」
4年前から準備が始まっていました。里山を取得してから現地の土地の手入れや施設の修繕は、ほとんどが震災で知り合ったボランティアの面々が手伝ったそうです。真野さん自身もこれに加わり宮城と岩手を行き来していましたが、ちょうどそのあと少しして、一度ぶっ倒れて危ういことにもなっていました。
なぜ遠野なのかは、その里山がそこにあったからなのですが、遠野は震災時、沿岸と内陸をリレーする復旧復興の拠点となっていました。三陸沿岸はずっと過去にも大津波の被害を受けており、おそらくその時代にも、復興の橋頭堡になっていたことでしょう。そればかりではなく、遠野盆地は古来、沿岸と内陸の産業と文化をつなぐ場所でした。
「つなぐ、という思いが私の原動力。土地をつなぐこともあろうし、人同士をつなぐこともある。そういった願いを遠野からというより、東北から発信していきたい」
今日と明日、里山ではプレイベントとして開山祭が開かれます。まだいくつかの設備を整える必要があるそうで、一般の人々に公開し活用してもらうのは2018年春とのこと。僕は最初、JACが蔵王で開いているリサイクルパークの第2弾だと勘違いしていましたが、企業活動ではなく個人の思い(リサイクルパークの理念も真野さんの思いではあるけれど)がこれほどのエネルギーを持ち成し遂げてしまうのかと驚くばかりです。