設計精度が原因なのか、金型の帳合が悪くて素組みするとあちこち「合わない」ことで有名だった、スズキエスクード唯一のスケールプラモデル。だからこそモデラ―側の腕を振るえるという変な側面も持ち合わせていました。全体の再現はよくできており、24分の一サイズのタイヤはもちろん、カバーとして造形されたスペアタイヤなどは、スケール通りに縮小するとこれほど貧素なのかという細さで、別の四駆模型から移植しないと気が済まなかったものです。
模型作りとしては大した話ではありませんが、このキットの成型樹脂が意外と透過性の高い赤だったもので、車体を塗装する際には表にも裏にもサーフェイサーを吹き付け、裏側はマットブラックで上塗りしました。模型塗料でインビエルノ・ブルーメタリックを再現するのはけっこう大変でした。デッドストックになるのは時間の問題ですが、整形色と同じ赤い車体の箱絵のこれは、まだ模型店の棚のどこかで積み上げられた模型の紛れて眠っているものも見受けられます。
ところが、ご存じの方もまだいると思われますがこのキット、同時にローダウンものも出ていて、そっちには興味が無かったので入手したことはなかったけれど、さらにスキー板とスキーラックを背負ったウインター仕様だとか、サーフボードを屋根に乗せたサーファー仕様だとか、どうせいじるんだろうからフロントガードも付属品で付けておいたぜと言わんばかりのバージョン違いも売られていたのが珍事と言えば珍事なキットだったのです。
さらにスタンダードな赤い車体のキットには、箱絵を変えてまでリリースしたというテコ入れな逸話もありました。90年代半ばに1600ハードトップの4型をベースに発売され、2003年で一度絶版になったのですが、金型が登録されているキットは絶版ではないと模型店の店主に教わったことがあり、店主の予告通り、炭火のようにとろとろとした長寿命キットとなっていました。うちにもまだ一個ストックがありますが、もう作るのめんどくさくて・・・