TDA第二戦は、シーズン途中でありながらレギュレーションの変更、具体的にはクラス分けを施しました。排気量を軽自動車から1600ccまでで区切り、これ以上の排気量は青天井。参加車両が増えてきたことと、常勝を誇ってきたパジェロ勢に歯止めをかけられるのが、事実上エスクードしかいない。その2車種の独壇場では他の車両が盛り上がらない。
このような背景も課題となっていたようです。このへんの話題はあとで紐解くとして、クラス分けの概略だけを聞いていると、ちょっと気になることが。
「ふーん、それじゃあ、川添選手が白いのと青いので、それぞれのクラスにエントリーして、どちらも優勝したらどうなるの?」
と、思うのが自然じゃありませんか。
白いのでも青いのでも、特に青い方でぶっちぎりの優勝をしてしまったら、クラス分けをした、というよりさせられることになった状況を生み出した風評にとっては、逆の結果を見ることになってしまうのではないか。またあるいは、彼が今回優勝できなくともエスクードで第二位の結果をもぎ取ってしまうと、今シーズンの結果もほほ固まっていくような気がします。
これはパジェロ勢にとっても、同じエスクードで戦う後藤選手にとっても、油断できない日となりました。ただ、このクラス分けによって、2000cc以上の車両たちの戦闘領域はかなりハードルが高くなっています。つまりどこかのカードで一旦負けて敗者復活戦にまわり、そこから勝ち上がって決勝。などという戦略を立てている余裕もないでしょう。それ以上にコンマ1秒を競う展開は、車両への過負荷も馬鹿にならない。
バリバリとは言わぬまでもカリカリにチューンした後藤選手のエスクードと、ミッションがヨレヨレの川添選手のエスクードとでは、条件が違いすぎます。そして、パワーで勝るパジェロのエンジンに対して、果たしてエスクードのJ20Aがどこまで食い下がれるか。さらにはパジェロ勢には耐久性に優れたディーゼルも存在するのです。ちなみにディーゼル車両は1600未満クラスに組み入れられていますが、1600未満クラスのどの車両もアンリミテッド宣言で上位クラスと戦うことができます。
「とりあえず、彼らは何か言ってますか?」
「そうですねー、今回はさすがに川添くんも緊張気味なのか、戦法をどう組み立てるかで迷っているようです」
「後藤くんは?」
「あっ、こっちはわかりやすいですよ。たった一言『正々堂々』って言ってます」
というのが21日夜の島監督との対話でした。一夜明けてレース当日の福岡は猛暑。モビリティおおむたには16台がエントリーし、さらにやっぱり川添選手はパジェロミニ(青)とエスクード(白)kWエントリー。全38試合という大乱闘となりました。
午前中行われた1600未満クラスは、選手会会長の中村選手が操るパジェロロング3200ディーゼルターボ、川添選手のパジェロミニ、WESTWIN宮崎選手のデリカスペースギア2000ディーゼルという順位の結果が出ました。この展開にはちょっとドラマがあるので次回フィーチャーします。
アンリミテッド予選では、コースの設定タイム53秒という基準に対して、後藤選手とエスクード(銀)は手堅く50秒を刻んできましたが、なんと川添選手のエスクード(白)は49秒をたたき出しました。これはどっちが車のことを考えているのかわからない結果です。こういうときは勢いに乗れている方が強い。耐久性はあるものの、パワーステージでは中村選手のディーゼルパジェロは歯が立たない。さらにライバルである三菱勢の廣瀬選手を三位決定戦に送り出し、決勝ラウンドは後藤・川添の一騎打ちです。
ところが、勝敗はあっけなく付きました。後藤選手がパイロン二個と接触。ペナルティでタイム加算。ここで後藤選手のコンセントレーションが途切れたか、終盤でミッションを破損したのは、後藤選手のエスクードだったのです。
冒頭の疑問の答えを聞くより早く、今シーズンの決着がついてしまうとは・・・
勢いとは、まさにこういう力がまだ出るのか?
昨年の第2戦目で後藤が開花した走り、そして伝説の最終戦も凄かったのですが
勝ちに飢えていた男がエスク-ドを手にした時から、ある程度勝ちは拾うであろうと
ある程度予想はしていたはずではあったのですが・・・
その予想を裏切るそれ以上の走りをまざまざと見せつけたられた昨日。
まさに最強のエスク-ド使い現るとは、この事をいうのか・・・・
今月のス-パ-ス-ジ-紙面上にあるTDAの記事のタイトル「STOP The エスク-ド」でも私達はこれを止めるのは、やはりエスク-ドでなければなりません!
銀色に輝くエスク-ドでしか白いエスク-ドの快進撃を止める事は出来ないはず。
2戦目終了でポイントは川添が100、後藤が70ともうほぼ90%以上川添の勝利が見えていますが
まったく後藤の闘志は冷めるどころか、熱く熱く燃えています。
私はこいつらの戦いを眺めることしかできませんが、心の底から
「羨ましい」と思う自分に、改めて気付かされた2012の夏の出来事でした。
極端なたとえをすると、後藤君がエスクードにスイッチしてから今回までのドラマは、数多のレース漫画やらアニメーションやらに出てくる展開そのままの流れです。
強い武器を手にしたときにライバルが居なくなったかと思うと、そのライバルが同等の力を備えて立ちふさがる。主人公はいったんボロボロになります。
今、そういうときです。
だけど漫画やドラマと違うのは、川添君もまた主人公であり、敵役ではないということで、ここから先どうすっかなーというのが、演出側(おいおい)の悩みです。
とりあえず後藤君に、消える魔球でも覚えさせるか(違)
幼馴染であり、現在も親友である2人。
今更ながら言わせて貰うと、性格、考え全て異なる2人。
その2人が同じ競技に参加し、まったく同じマシンを駆りそして優勝争いを演じる。
もちろん性格が違うから車造りも違うけりゃ戦法も違う。
本当にこんな漫画あってもいいかなって言うくらい外野が見てると
物凄く面白いのでしょうが、TEAMとしては(汗)
やっぱり筋書きのないドラマなんですよね・・・
実はプロットは出来ているんです。
一日が30時間あったら、原稿書き始めています。そういう時間の制約が大きいことと、限界速度でパイロットする際の動作やら癖といった書き分けに関して、知識も含めて情報が足りずに書き出しに至っていないのです。
ちなみにそのプロット、冒頭で「川澄哲夫」と「藤堂永司」は、ダカールラリーの砂漠越えでリタイアするところから始まります。