盛岡というとなんとかの一つ覚えのように福田パンに通い詰めて、コッペパンをかじりながら車で移動というパターンが多かっただけに、実は食い物屋さんの情報にまったく蓄積がありません。以前、郷土料理っぽい料亭にふらっと入り込んだことがあったけれど、それが何処だったか覚えておらず、ランチのボリュームに対してワンコイン?というありがたい喫茶店の場所も思い出せず、仕事先近くの路地を歩いていて時間を見たら正午をちょっと過ぎていて、こりゃ何処もいっぱいで選択の余地はないかなと立ち止まったところに置いてあったランチメニューの書かれた黒板が目に入って、するっとドアを開けました。
10人分のカウンター席のみ(奥の2人分は厨房の仕切り壁によって手元のテーブル面積が半分)の、なかなかジャンク趣味的な佇まいに「よしよし、こういうとこ好きだぜ」と席を取ったら・・・というより店内に入った瞬間、客がいない。12時半。まず仙台ではそういう店はお目にかかれない。
「うちに来るお客さんは11時台の後半にお昼ご飯にいらして、12時ちょっと過ぎには帰られますね。それ以前にあちこちに飯処から喫茶店までひしめき合っているのが盛岡の街ですから」
店を切り盛りしている青年と話をしながら、盛岡の人の方が勤勉なのか、あるいは昼時の食事とお茶は別々に時間を割り当てているのか。などと考え考え、ランチのオムライスを食っていますが、やっぱりお客が来ない。むー・・・ここは昼どきというより夕方以降の店のようだなあ。
するとようやく1人、常連らしきお客がやってきたのですが、
「1時間後くらいに持ってきて―。会計は今していくね」
おお、デリバリーもやっていたのか。オーダーされたものをメニュー表で見てみたら、クラブハウスサンドやらホットドッグやら、パンにメニューに使われているパンは福田パンから供給されている。献立自体のバリエーションはずいぶんと豊富で、よく1人で切り盛りしていると思いきや、その配達に出ていたもう1人が戻ってくるのでした。
で、この間、カウンターは僕1人。まるでエアポケットに入り込んでしまったようなのんびりの昼飯です。ただし、ふわふわの卵は上手だけれど、チキンライスに関しては、たぶん僕の方がうまく作れるぜ(笑)