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  ~懲りない傾向~

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花1前項「風花」にて書くことはほとんど書いてしまいましたが、結局謎のままに終わったノマドの出自と採用の経緯。それでも、全く異なる物語(だから理屈上も別のエスクード)でありながら、全く同じ個体が二つの物語を支えるのは、実に稀有な出来事だったといえましょう。邦画をいろいろ観ていくと、たぶん同一個体ではないかなというTD11WのV6ノマドが、これまたほぼ同じようにスタントシーンで衝突回避のスピンをさせられるシーンにめぐり合いますが、「風花」と「花」における同一個体のTD01Wテンロクノマドの扱いはロードムービーを成立させるツールであり、それらとは一線を画した堂々たるバイプレイヤーなのです。

あの困惑のピンクのツートンから、2度目(たぶん)の全塗装を施されたノマドは勿忘草をイメージさせる車体色となっています。前作では北見ナンバーだったものが品川ナンバーに変わっているので、当初は別のエスクードに前作と同じ架装(グリルガードと補助灯)したのかと思いましたが、「花」の公開時に配布されたライナーノートで、「風花」で使用した4WDを塗り替え・・・という記述が確認できます。

勿忘草はこの映画の縦糸を補助する仕掛けとなっていて、物語に描かれない背景として、このノマドがそんな色をしていたから、所有者として登場する老弁護士(柄本明さん)はこれを無意識のうちに選んだのかもしれないという想像ができることになっています。

前作の北海道に対して、日本橋から指宿までを旅するために、ノマドのドライバーというアルバイトを引き受けた青年(大沢たかおさん)にとっても、勿忘草というモチーフは間接的にかかわっていきます。

「風花」が制作され海外の映画祭に出展されたのが2000年、翌年に国内封切りされ、「花」は2002年制作、2003年11月公開でした。詳細な製作期間はわかりませんが、相米慎二さんは2001年の9月に亡くなられたので、西谷真一さんが師匠たる相米さんへの追悼の意味も込めて「花」を撮ったのは、かなり急な仕事だったと想像できます。これは素材の選択からもわかることで、鳴海章さんの「風花」が1999年、金城一紀さんの「花」が収録された短編集「対話篇」の出版が2003年です(短編自体がそれ以前に発表されていたのか?)。しかしお恥ずかしいことに、そのどちらも読んだことがありませんので、それぞれの物語の中にどんな車がどのように登場していたのかは、興味のある方の読破にお任せします。

 

 

 

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