先週、フィルムメーカーによるフォトグラフ撮影技法を素材とした動画が爆発的に炎上し、短時間で沈静化していきました。ストリートフォトのジャンルで、街を歩きながらインスピレーションの赴くまま被写体ににじり寄り、すれ違いざまに、撮る。個人情報保護法が施行される以前は、撮る側にとっては「なんか文句あるか」のテクニックだったのですが・・・というかテクニック以前の出会い頭な行き当たりばったり撮影なんだけれど、だからこそ一瞬のマッチングですごいものが撮れる(かもしれない)
今回は、SNSの世界がそうは問屋を下ろさず、刃物をカメラに置き換えただけの通り魔だと非難しました。これはお説ごもっともな話です。想像でしかないのですが、これに対してフォトグラファーたちは昔からある技法だと反論するでしょうが、時代がそれを許さなくなっているのです。
しかし僕自身人のことは言えず、ウェブ上のサイトリポートにおいて、イベント参加者の顔にマスキングをしていません。まあ言い訳するならサムネイルサイズで顔の識別はできないレベルであることと、顔出しで掲載する旨を伝えて了解は得ている(すいません、時々忘れてます)ということが、決して蚊帳の外ではないだろうと思えるからです。心情としては、マスキングすること自体が、その人たちに失礼じゃないかという理屈ですが、個人情報保護の観点から見れば「なにを独りよがりなこと言ってやがる」と叩かれるでしょう。
ちょうどこの直後、写真家の山崎エリナさんとお話をする機会があり、談話の本題の後にちょっとだけ、今回のネット炎上の件を伺いました。山崎さんはここ数年、建設工事現場で働く人々の表情を撮り続けており、そこには被写体との撮影条件や了承といったフォーマットがあるにせよ、目尻のしわから笑顔のほころびまでつぶさな写真を表現しています。炎上の構図とは根本的に仕事の仕方が異なるわけですが、「相手の方々から信頼関係をいただけるということが、レンズを向ける側の気遣いや責任によって成り立ちます」(要約)と話して下さいました。
今日使っている写真は、山崎さんの個展会場の一コマ。これは個展に同行したいわさきさんによる撮影ですが、彼女はこのアングルからの撮影でも「ちょっと撮らせて下さい」と一言入れてからカメラを構えています。大事なことです。それができているから、元の写真の左右のバランスがダメダメだったり水平が出ていなかったりするのは、目をつむってトリミングしていますが、それはそれでいわさきさんに失礼かもしれない。