『仮面ライダー THE FIRST』の公開から15年が経ちました。『仮面ライダー3号』が『THE FIRST』の造形をある程度踏襲した以外は、『仮面ライダー1号』で「ええっ?」というリデザインが行われただけで、たいていの客演は『新1号』が使い続けられています。ここに上げている1号は『仮面ライダー THE NEXT』の仕様ですが、リペイントとダメージを加えた程度で『THE FIRST』の意匠がベースです。この15年、結局これを越えてくるデザインはなかったと感じます。
『THE FIRST』の造形には出渕裕さんが手を入れていましたが、元々に遡って石ノ森章太郎さんが二次元でデザインしたものをそのまま立体化した、いわば「コミカライズ1号」と「テレビ版旧1号」を比較しても、最初のコスチュームを作り上げた造形屋さんの仕事は素晴らしかった。改造人間と変身の概念が映像上では作り切れなかったにしても、仮面と戦闘服という表現においては、「旧1号」は異形の怪奇性を十分に持ちながら、ヒーローとして成立していました。
「旧1号」のマスクは、ヘルメットに始まり髑髏のデザインを経てバッタの顔立ちへ変遷したことが有名ですが、一歩間違えば・・・いや間違ったから?ヒーローに転じていて、それが無ければ世界征服の尖兵だったわけです。怪奇物という路線で企画された『仮面ライダー』だけに、バッタ型改造人間の姿は二次元デザイン時は生物テイストを滲み出していますが、マスク=仮面の域には少し遠かった気がします。この点において特撮の三次元造形による功績は大きいのです。
『THE FIRST 、THE NEXT』では、仮面という造形、ベルトの機能、戦闘服としての意匠に「ギア」というガジェットをきめ細かく取り入れたことが特色です。趣味的にはクラッシャーをここまでしゃくらせなくてもとも思いますが、「ホッパー」と名付けられる改造人間のいで立ちをよく表現し、これが組織を裏切り正義に転じると「仮面の男」としてヒーロー性が前面に出てくる。もとのデザインが秀逸なだけに、出渕デザインも古さを感じさせません。
いつからか、仮面ライダー〇〇の造形は「モビルスーツ化」してしまったように思えてならないのですが、平成のシリーズが既に昭和の作品群を数で凌駕し、令和のライダーも二人目の主役が登場してくるなかで、様々なしがらみでそうなったのでしょう。もはや改造人間という素体の起用は困難だとも言われるけれど、あのごちゃごちゃしたスーツでよくあれだけ動き回れると感心します。でも、このヒーローの戦闘服や仮面は、程よい軽快さが肝心ではないかと考えます。