1970年代のヒーローが使っていたスーパーバイクは、押しなべてエンジンに原子炉が搭載され、それ自体がとんでもないコンパクトさという超テクノロジーながら、スペックを見るとなかなかチープなものでした。
本郷猛が最初に乗ったサイクロンも原子力ジェットエンジンで、たぶんタービンを回してジェット噴射(チェーン駆動じゃないということか)で走っていたらしい。原子炉なんて、立花藤兵衛さんはいったいどうやってメンテナンスしていたのか、そらおそろしい話ではあります。
でも出力は200馬力くらいで最高速度が400キロと、オートバイとしてはすごいけど原子力でもそんなものなんだーという数字でした。最近のライダーマシンはほとんどホンダのバイクから起こされているので、HRCのGPマシンで比較すると、ガソリンエンジンで200馬力は実用域にあり、速度も300キロ台に載せてきていますから、現代においてはわざわざ核分裂まで持ち出さなくとも、仮面ライダーの専用マシンは比較的容易に作り出せるようになっています。最近のライダーは改造人間じゃないから、改造人間の肉体に準じて・・・などと深く考えなくてもいいようだし。
数年前の映画で描かれた「仮面ライダーtheFIRST NEXT」でも2台出てきたサイクロンは、市販車のカスタマイズによる超高性能バイク、という設定でした。しかし内燃機関の種類に決着がついたものの、サイクロンというマシンのデザインとアイデンティティーにはこだわりを持つ人がいて(僕もそうです)、サイクロンの排気に集合菅は似合わない。6気筒分のサイレンサーがあってこそのサイクロン。という造形が、時々出てきます。
ところが、エンジンを実在のユニットとして考えると、FIRST版のサイクロン1号のようにCBRをベースにされたらそれはありえない。じゃあどうやって6気筒にするんだ?という葛藤から、オリジナルの解釈をするわけです。ちょうどこの頃、motoGPのレギュレーションが変更され、HRCではRC212VからV型4気筒に変更した経緯がありました。しかしそれ以前のRC211VはV型5気筒エンジンだった。これをもってきて、実はサイクロン1号にはこのブロックをさらに改良して、V型の前も後ろも3気筒という特注ブロックを供給してもらったという設定をでっち上げることで、映画に出ていたサイクロンがさらに改良され、6本出しのサイレンサー仕様になっているという展開を描いたのです。
にもかかわらず、最近購入した2009年版のサイクロンを見たら、なんとサイレンサーは6本なのに、エンジンが4気筒に変更されているではありませんか。なな、なんでそんなことをするんだ? と、しばし考え込んでしまいました。いやまあこれだけの大排気量なら、わざわざ集合サイレンサーにしなくても中低速のパワーもトルクも活用できる(サイクロンの中低速って何キロくらいなんだよ)でしょうが、だからといって、なにも4気筒の排気を途中から2本株分けする必然性も、素人には見出せないのです。
現代のエンジンならば、6気筒のシリンダー構成でなくとも、ハイパワーは引き出せるのでしょうけれど、そこはサイクロンゆえに排気を4本にまとめることはできなかったということか。しかしそこにこだわるのなら、一定の説明がほしいなあと思うわけです。