実はボルドール、本年9月に開催されるのです。これはまたなんという巡りあわせでしょう。とはいってもこっちの物語は2024年の鈴鹿の耐久レースです。沢渡家は84年にとーちゃんが4耐に出走して優勝を遂げていますが、その後設立されていったチーム・バトルホークは8時間耐久でリタイアに終わりました。さて末っ子の「よしの」が、ちぃねーちゃんの「かぐや」と、沢渡家の車庫から掘り起こしたのがもうほとんどポンコツのバトルホーク。もちろん動きません。
かぐやがこれをバイクショップバリバリに持ち込み、修復と改良を始めたのが2022年のこと。よしのは高校に入学したばかりですがさっさと自動二輪の免許を取りに行きます。緋沙子ばーちゃんの下で美容師修業中の長女「なつか」は、実は子供のころから英才教育を受けていてかぐやと二人でMFJ国内ライセンスとSMSCライセンスまで行ったのですが「店の後はあんたが継げ。あたしの全財産もあんたに譲る」と、ばーちゃんに諭され今に至り、修行の傍らばーちゃんの許しを経てレースカムバック。とりあえず妹たちもとーちゃんの子育ての一環で、子供のころからバイクレースには出ていた前提です。
構造もメカニズムも当時は革新的だったはずのバトルホークは、現代のオートバイに標準化されてきたメンテナンス性の高さと真逆の複雑さが壁となり、かぐやの整備の腕前ではようやく走らせることが精いっぱいの修復レベル。耐久レースに出ると言い出した末っ子に、鷹とーちゃんは「怪我でもしたらどうすんだ」、パトリシアかーちゃんは「なにさ自分だってかまぼこ板添え木にしてレースやってたじゃん」と大もめ。しかしSMSCライセンスの取得に必須である「満18歳以上」という規定に関して、よしのがそれを満たすのが2024年4月。そこからライセンス取得して実際の耐久に備えたトレーニングや練習走行などを考えたら、確かに鷹とーちゃんの反対も正論です。
かーちゃんは実家筋から腕の良いメカニックを来日させ、緋沙子ばーちゃんは東亜自動車会長となった東条鷹にチームプロデュースを個人的に依頼し、倅にはおこぼれで監督を命じスポンサー見つけて来いと厳命。せっかんが未だに怖いとーちゃん、つてをたどって某大手企業をメインスポンサーにとりつけていくのが2023年。
東条おじさまが呼び寄せた花園明美師匠(かぐやに対して)の提案で、旧バトルホークの隠れた問題点であるエアブレーキシステムは廃止。ステアリングは垂直式からライダーの疲労度に合わせて45度任意に倒せるバリアブル・バーチカルタイプに変更。バッテリーも全個体式としました。電力消費量の大きなデュアルヘッドライトは4時間耐久では重視する必要なしと判断され、旧作のラジエター位置に移し単眼に変更、かつてのヘッドライト部分からカウルにかけて、クーリングシステムも内蔵したラジエターを2連装で組み込みました。
「二輪駆動はお約束だ! 東条、なんとかしろ・・・いや、してください」という監督の我侭はまあ認められ、東亜自動車のビスカス式メカニズムをモデルとしたフレキシブルチューブ駆動の試作版が用意されます。てことで、「チーム・うめ(なつか)・もも(かぐや)・さくら(よしの)」によるバトルホーク2024は、あのボルドール24時間優勝から39年の時を超えて、最初で最後の4時間耐久を走り出すのです・・・が
まずバトルホークみたいな市販車改造型では4時間耐久のレギュレーションには適合しませんから、何かしら上の方からの圧力でもかけて特別枠でも設定しないとこの話は書けないのです。それから、・・・仕方なく2024年夏の話にしているんですが、なぜかって鈴鹿の4時間耐久って昨年で終わっちゃったんですよねえ。
というわけで、やっぱり娘らの年齢を引き上げてレースキャリアを積んで、8耐で設定しないとこれはだめだね。で、次回完結編はいきなり2025年の8時間耐久に舞台を変更していきます。8月3日、三姉妹が「56番目のチーム」として走るのは、ポッと出のチームなのに予選通過したのか?ってところをなんとか勘弁してください。
でも・・・よしのはやっぱり高校生設定だよなあ。
↑等々いろいろめんどくさいことに挑まねばならないのですが、何に一番頭を回転させたかって、三姉妹の名前です。桜のよしのはいいとして、なつか、かぐやは、梅の品種と桃の品種を血眼になって調べました。
いやあ楽しませてもらいました。
スポンサーと言えば、本編でのスポンサーがJALで「アリタリア航空みたいに、本当にスポンサードすればかっこいいのになあ」と思っていましたが、現代ではトヨタのWRCチームのスポンサーにJALがなっているあたり、ついに現実になったかと、感慨深いものがあります。
完結編を書いては直してまた書き足して、ここにまとめている構造とはまるで変ってしまいました。
なんと、主役のはずのよしのが走っていないという(笑)
といってマイティジャックのときのような連載にできるほどスタミナも知識もないので、文字通り一発勝負なんですが、そうするともう少し掘り下げたかったスポンサーのくだりがテンポの上で邪魔になってしまうので、「あ、そうきたか」程度の遊びになっています。