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  ~懲りない傾向~

聞き間違えた男 和邇さんの手記

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甲州街道の遭遇『咄家(はなしか)さんですか?』

バイクの男は唐突に聞いた。

『いえ、違いますが』

サイドキックの男は答えた。

『あ、すいません』

バイクの男は走り去った。サイドキックの男は思った。

『まだ信号、赤なのに…』

先日の出来事です。取引先の担当者と一緒にサイドキック2号で外回りをしておりました。
途中、一台のバイクが後方に付いているのに気付きました。比較的道は空いているのにこちらを抜く気配もなく、しばらく同じペースで走り続けたのです。
味の素スタジアムに差し掛かり、道路幅が広くなったところでバイクは2号の右側に並びました。ヘルメットのバイザーで眼は見えませんでしたが、明らかにこちらを凝視しています。信号が赤になり停車すると、今度は左側に回り込んできて窓をノックするではありませんか。

はて、何か気に障る運転でもしちゃったかな?と窓を下げると開口一番

『咄家さんですか?』

確かに一時、小朝に似ていると言われたこともありましたが、いきなり落語家に間違えられることもなかろうと『違います』と即答し、路上の邂逅はそれまでとなりました。
走り去るバイク。信号が変わり妙な空気感の中で走り出した2号の車内で助手席の同乗者が、

『アラシダさんて誰ですかねぇ?』

 へ?

『咄家さんて聞かれましたよね?』

と私。

『いえ、アラシダさんて言ってましたよ』

『・・・えーとー(汗)・・・』

 

どうやら雷蔵さんと間違われたみたいです。“ライゾウさん”と言わなかったところを見ると、つくばーどのミーティングなどには参加されたことのない方なのでしょう。人違いとはいえ、せっかく声をかけてくれたのに無下にしてしまいました。申し訳ないことです。

同じ車種に乗っている、というだけで見知らぬ人に声をかけるということは、けっこう勇気のいることです。大概警戒されてしまうのがオチでしょう。私の生活圏にも個性的なエスクードが三台います。
私がジムニーに乗り始めた1983年頃は、四駆はジープ、ランクル、ハイラックス、ダットラ、ロデオくらいでありまして、パジェロの爆発的ブームが起きる直前といった時期でした。
某マガジンの黄色いステッカーをバンパーに貼り、四駆同士すれ違う際には手を挙げて挨拶しようね、という今では考えられない四駆乗りの奇妙な連帯感があった時代です。
声をかけてくれたバイクの方、年齢は私よりもかなり若い印象でした。もし、またいつかどこかで巡り会う機会があったら是非お話ししてみたいと思った出来事でありましたです。

 しかしBLUEらすかると和邇家のサイドキック2号を間違えるなんてね。私からしてみれば光栄なことですが、なんで間違えたんだろ?

 

朝一番に届いた和邇さんからのメールがあまりにもおもしろほほえましかったので、事後承諾転載です。昨日の僕自身の体験記事よりもインパクトがあります。そして確かに80年代ってそういう時代を過ごしていて、エスクードに乗り始めてからエスクードとすれ違おうモノなら両手を挙げて(おいおい)サインを送りあった時期がありました。

和邇さんには最初、

「そのバイクの人がチブル星のアンドロイドじゃなくてよかったし、和邇さんがまたいたづらっ気出さずに違うと言ったから、フルハシ隊員みたいな目に遭わずに済んだのかもだよ」

と言ったのですが、バイクの人にしてみればきわめてどきどきの状態で声をかけたのに人違いだったという、穴があったら入りたくなる瞬間だったかもしれません。いやはやそれは間接的にも申し訳ないことをしてしまいました。僕もハナシカではないのですが、声をかけてもらえたなら立ち止まれるよう心がけて参りますので、甲州街道のバイクの人、東北に来られることがあったらまたトライしてください。

ちなみにBLUEらすかるは水色のエスクードです・・・ん? 少しお待ちください。

和邇さんのお嬢妹から入電です。

「それって間違われた男というより、聞き間違えた男じゃないですか!」

うーん、そうとも言えるなこれは。