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  ~懲りない傾向~

orange☆mystery

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蜜柑三浦型露地野菜経営で有名な神奈川県横須賀市の津久井浜。主力品のひとつであるみかんの歴史は江戸時代に遡り、鰯漁のために紀州から三浦半島に移住した人々が苗木を持ってきたのではないかと言われています。北浦あたりのみかん栽培方法が、紀州とよく似ているからだそうです。それをルーツと断定するかどうかはともかく、栽培の基盤が確立したのは明治時代です。

観光農園の基礎作りは昭和30年代にはじまり、神奈川県の営農団地整備事業として集団みかん園が誕生しました。以来苦労工夫の歳月を過ごし、糖度12、酸度1.2くらいの上質なみかんが供給されるようになっています。

宮川早生(みやかわわせ)や興津早生(おぎつわせ)といった津久井浜のみかんの品種は、しかし紀州ではなく温州みかんと呼ばれています。紀州みかんは中国から伝来し、紀州(和歌山県)で産業化されたのが15世紀以降。一方で温州みかんはその名が中国の地名ですが、どうも原産地は鹿児島県あたりで生まれたもののようです。紀州ものも元々は熊本に上陸したのが原種ですから、その中から挿し木や接ぎ木で改良され鹿児島で成立したのが温州ものの原点ではないかと思われます。

これが明治時代までもてはやされなかったのは、品種の特徴である種のない果実が、武家にとっては縁起が悪いとされ遠ざけられていたかららしく、維新のあとから食べやすさが重宝されるようになったということでしょう。そのわりには、日本のみかんの原型とも言うべき「橘」を家紋とする文化もあり、その意味するところは後述する「橘に与えた不老不死や永遠の象徴」というメッセージが込められています。

宮川早生については、成り立ちがもっとはっきりしています。大正初期、福岡県柳川市の宮川謙吉という人のもとにあった在来温州の一枝が変異したということです。この時点で国内原産地が二転三転しちゃってますが、三浦半島全体でみればシークゥワサーもデコポンも夏みかんも栽培されていますから、今となってはたいした問題ではありません。

日本におけるみかんの歴史は垂仁天皇の時代に現れ、常世の国から持ち帰られた不老不死の薬効を持つ非時香菓(ときじくのかくのみ)がそれです。この命を受けた田道間守(たぢまもり)が役目を果たし帰国した年にはすでに崩御していたという説話が日本書紀などに記されており、垂仁天皇自身は 「時を定めずいつでも黄金に輝き芳香を漂わせる木の実」を見ることはありませんでした。

もっとも垂仁さんは齢140とも150いくつともいわれている、ほんとかどうかは定かでない長命者。「トキジクノナントカ」を取ってこいと命令が出たのはいつごろの話だよ?ということになると、無理やり西暦を当てはめるしかなく、日本に入ってきたのが西暦60年代くらいかな、としか言えないのです。

それでも、田道間守が持ち帰ったことから「トキジクノ」の実や枝は「田道間花」と呼ばれるようになったらしく、このタジマバナという言葉が変化して「タチバナ」となり、どうやら今でいう橘(たちばな)がこの実のことであるようです。橘の記述はずーっと時代が進んだあと、魏志倭人伝において「倭の国には生薑とか橘とか山椒とか茗荷なんかがあることはあるけど、やつらは食用にはしていないね」という内容の記述として存在が立証されます。

なんと、食い物にはしていなかったと。記紀説話の如く薬用の扱いだったのでしょう。果実としてのみかんは最初の話に戻って、遣唐使による中国との交易が行われるまで時間が止まっていたということになるのです。おそらく橘の時代、今のような糖度の高いモノではなかったからかもしれません。

その橘も育成環境で変化し枳(からたち)に化するというようなことは、紀元前300年代の中国でも語られており、日本の、田道間守が持ち帰った時代の果実はきわめてすっぱかったことや高貴な扱いとして薬用に資するものだったと考えたくなります。柑橘類というのは体脂肪の分解・燃焼を促進してくれるし、その葉はそれこそ時を定めずいつでも緑色で生い茂りますから、薬効や不老不死へと古代人のイメージがだぶるのもうなづけます。

そんな柑橘類は何処から来たのかとさらに遡ると、中国以前はタイ、ミャンマーに進化の痕跡があり、もっと辿るとインドのアッサムあたりだそうです。学説的には、その原種発祥は3千万年前だというからもう手に負えません。飯盒炊爨キットをリュックサックに詰めて学芸大学前から電車に乗る(そういう歌詞の「三千万年」という歌がある)どころか、霊長類自体にヒト科がいません。ヒマラヤ山脈も造山運動中です(あっ、これは今もか)

これだけ種としての歴史を持っていれば、ヒトの世の中では間違いなく不老不死や永遠の象徴に掲げられても不思議はなさそうです。

あー・・・長すぎる。でも植物3千万年の資料が無いので息切れ。もぎたてビタニャンCでも補給してまいります。