前編、中編と「ウルトラセブン」における劇中設定の謎を取り上げましたが、半世紀にわたるもやもやは他にあります。地球防衛軍の極東基地が静岡県にあるというのは、「生活用水から原子炉冷却に至るまで、豊富な水源を必要とする」基地の性格上、年間約24億トンとも言われる富士山降雪水量を湛える麓の地下水源を利用するのが最も合理的な理屈なのです。それでも再び、やっぱり神奈川県じゃないのか?と思わされている二子山サイロのことなのです。
二子山サイロはウルトラホーク1、2号の発射拠点で、山体下部にカタパルトやそこに至る格納庫からのエレベータが設置されています。ホーク発進時、この山体はカムフラージュを解き、山体が「見た目真後ろにスライド」するのです。・・・ちょっと待て。スライドした方の山体はいったいどこに移動しているのよ? このメカニズムに対する疑問が半世紀ずっと、自分の中で解き明かされずにくすぶり続けているのです。だって、一部分とはいえ山そのものが動いちゃうんですよ?
ウルトラホーク1号は全長42メートル、翼端までの全幅が20メートルです。少なくともカタパルトのエレベータはこれよりも大きい。二子山カタパルトはその面積分をスライドするのです。動く方が鉄骨フレームに植林した偽装ドームだとしても、とてつもない規模じゃないですか。動かす側の受け皿になるスペースだって必要なのです。見た感じ、そのような平坦地はない。しかし二子山の後方にたぶんその平坦地は「あり」、そこに丸々動かされている構造としか考えられません。
スライド側の山体断面は法面擁壁の上層に樹林を植栽していますが、擁壁の内側がどうなっているか不明です。この質量を動かすのだから内側は空爆に耐える構造を取りながらも、軽量化された空洞と考えられます。偽装樹林も枯れたり折れたりしない人工樹木でしょう。蛇足ですが2号発射サイロは1号カタパルト部の前面に配置されているそうです。2号は全高64メートルですから、極東基地は地下数十メートルどころか100メートル超の大深度まで活用されているようです。
何が知りたかったかって、劇中の発射シークエンスよりも、その撮影セットをどう動かしていたのかのギミックなんです。何年か前に「ウルトラマンアート」なる展示会で、二子山模型が展示されたのですが、それはホーク発射段階の開口部に過ぎず、山のスライドは再現されていませんでしたし、カタパルトの解釈も「その場設定」でした。唯一、24話のみ急上昇する1号を上からとらえていますが、二子山はロケット雲に隠れて見えません。謎は墓場まで持って行けということですね。
ところで二子山サイロは、開口すると内部が無防備に露見するという極東基地の弱点でもあります。その際致命傷になるのは、おそらく2号用サイロが地下深くシャフト状に潜っている構造で、ここを爆撃された際のダメージは計り知れません。ところが、史上最大の侵略において敵対したゴース星人の武器は地中弾道弾でした。ゴース星人、なんで極東基地を地底から直接攻撃しなかったのかも謎です。片っ端から富士箱根伊豆方面に打ち込んでいけば、いくつかは命中したことでしょうに。