我が家のエスクードのうち、BLUEらすかるΩを除く2台には馬蹄の内側に楯をあしらったエンブレムが付いています。これは僕の親父が自分と兄弟のために作ったもので、昔はそれぞれのクルマに張り付けられていました。親父の兄弟たちはこれの価値については頓着せず、彼らの分は乗り換えなどで失われてしまい、その都度親父は激怒していました。現存するのは2枚だけです。全くの偶然ですが、これはつまり我が家の紋章で「エスクード」なのです。
何度か解説してきましたが、エスクード=楯→家系の紋章という中世ヨーロッパの文化によれば、この楯にはそれを持つ者の家系や領地、階層をも表していたそうです。さすがにうちは領地とか階級には無縁の一族ですからその表現はありませんが、うちの家紋、苗字が彫り込まれ、本来なら領地と階層の部分は、親父と兄弟が昭和の走り屋であったことを示すチェッカーフラッグが描かれています。
このエンブレムは銅製で、彫り込みは高度経済成長期においてはスタンダードであった銅版印刷(凹版印刷)で使われた、点描した箇所を塩酸や硝酸で腐食させるエッチング技法で作られています。これも前世紀中には印刷技術が進化し失われた技術となったようです。親父は僕が免許を取得したときに、隠し持っていた予備を分けてくれました。無くしたらハラキリものだとかなんとか言いながらね。
僕がクルマの運転から退くときには、霰や霙かその子供たちに継承される予定ですが今のところ全く未定。しかし親父ときたら重大なデザインミスをやらかしており、外周に取り付けられた馬蹄が、実はこの配置だと「物や富を貯めておくことができない」逆さまの悪縁なのです。どうりでうちは下層階級のままなわけだよとも思いましたが、いまさらどうにもならない作りなのでそのままにしております。そんなことをぼやきながら、本日はスズキエスクード(初代)の誕生日。