6月13日って何かあったはずだよと思いめぐらして、小惑星探査機はやぶさ(写真)の地球帰還のことはすぐに記憶が蘇ったのですが、それじゃなくてなんだっけ? 何かあったのよとしばらく考え込んでしまいました。いや、けっしてジェイソンの誕生日、ってやつじゃなくて・・・
と、しょーがないので百科辞典を調べました。ありました。1983年、木星探査の役目を終えたアメリカの宇宙探査機パイオニア10号が、海王星の軌道を越えて、太陽系の外へと乗り出していった日です。
パイオニア10号は1972年に打ち上げられ、翌年に木星へ到達しました。その距離だけでも1年かかる途方もない道のりですが、太陽系を出るには、さらに10年を費やさねばならなかったと、気の遠くなる距離を進んでいました。現存していれば、太陽から約105億キロ以上離れた宇宙を、今でも移動しているはずですが、残念ながら2003年1月に通信が途絶しています。
この2003年こそ、小惑星探査機MUSES-Cが打ち上げられ、その5月の打ち上げの日に、はやぶさの愛称が公表されたのでした。はやぶさは小惑星1998 SF36 (後にイトカワと命名)まで飛行し、サンプルリターンの偉業を成し遂げるのは記憶に新しいところですが、これが2010年の、やはり6月13日というのは、プロジェクトチームの意図するところだったのでしょうか。
パイオニア10号、はやぶさ、どちらの探査機も異なる形で消え去っていった。そしてパイオニア10号のことは、すっかり記憶が風化していたように、いつしかはやぶさのことも忘れていくのだろうなと、ちょっと申し訳ない思いに駆られます。なんせ、けっこう、密かに思い入れした帰還だっただけに。そのくせ、最初の頃はMUSES-Cとはやぶさが同一の個体だと分かっていなかったんだよね。
しかも、MUSES-Cだったら筑波のJAXAで、実物なのかレプリカなのかはっきりしませんが、それを見ている上、探査機に載せて署名を宇宙へ飛ばすという企画に一口のっかったにもかかわらず、しばらくそのこと自体を忘れていました。
自分が何かを忘れていくことに、実はさほどの痛みも感じない。忘れてしまうのだから感じるはずもない。それでは、忘れられ風化させられていく方の対象に感情があるとしたら、どうなんだろう・・・