禿山に地霊チェルノボーグが現れ、手下の魔物や幽霊、精霊達と大騒ぎして、夜明けとともに消え去るというムソルグスキーの交響曲は、スラブの神話を基に組み立てられたロシアの民話が原典となっていますが、その一夜というのが、夏至の頃の夜祭りである聖ヨハネ祭りの前夜、つまり6月23日の夜のことなのだそうです。
スラブの世界では、チェルノボーグというのは不幸や闇を司り、悪の化身のような扱いで、黒い神。真逆の白い神がスラブ神話には登場し、両者が力を合わせることで世界が創造されるものの、やがて黒い神は白い神に駆逐されて地に落ちていくという・・・
チェルノボーグ、かわいそうじゃん。という想いがムソルグスキーに宿ったのかどうかは定かではありませんが、禿山の一夜の中では、それほど悪いやつとしては表現されていないような気がします。いずれにしても、聖ヨハネ祭りの前には不思議なことが起こると。ヨーロッパでは夏至の頃になると、妖精の力が強まり、森や原野で祭りを開くと言われているのですが、その一コマをスラブ人が口伝で残した神話では、地に落ちた黒い神にも自由と平等が与えられていたのかも。チェルノボーグ、黒い神とは、どこぞで征服され駆逐されていった、土着の民のことなのでしょう。しかし6月23日と夏至の夜は天体の動きによってずれており、1903年がそうだったらしいけれど、今世紀中は少なくとも23日が夏至にはならないようです。
やっぱりチェルノボーグというのは「不幸の神」ではなく、「不幸な神」なのではないか。と、思いながら気がついた。しばらく関東では夜会をやっていないなあ・・・暑気払いでもやれぬものかなと・・・