聞くところによると2021年は「ウルトラシリーズ55周年」「仮面ライダー50周年」「スーパー戦隊シリーズ45作」←ここがなんとも作為的・・・という、5年に一度のお祭りなんだそうですが、誰だよそんな合わせ技を言い出したのはというほど、以前は無かった括りでした。特撮の映画はそれ以前にも存在していますが、テレビ放送で茶の間に届いたというところがエポックなのでしょう。それほどに、その1年前の「サンダーバード」のインパクトが大きかったのです。
日本の特撮の場合、大きな特徴は「怪獣」の存在と、相対する「ヒーロー」という肉弾戦構図で、これはサンダーバードには無かった(怪獣っぽいものでは皆無でもないのですけど)ジャンル。しかも、「ウルトラマン」も55年めですが、ウルトラシリーズという考え方においては、円谷シリーズでもTBSシリーズでも、第1作はヒーロー不在の怪獣対人類の図式で、栄えある栄冠は「ウルトラQ」第1話に登場するゴメスとリトラに輝くのでした。
1966年、「ウルトラQ」が存在したからこそ、後に第一次と呼ばれる怪獣ブームの先駆けをウルトラシリーズが獲得できていますが、「ウルトラマン」は、10数日の差で「マグマ大使」に「初のカラー放送巨大ヒーロー」の冠を持って行かれてしまいました。これは71年の第二次怪獣ブームでも繰り返され、「帰ってきたウルトラマン」が、「仮面ライダー」と僅差の1日前に放送開始されているのですが、71年の先駆けは新ウルトラマンではなかった。
よりによって(失礼)、71年1月に放送開始されたのは、「宇宙猿人ゴリ」でした。彼はIQ300という天才科学者ですが、過激な思想により母星を追放され放浪の末に美しい惑星・地球に辿り着いたものの、地表における人類の公害発生と環境汚染の様に激怒し、実はかなり真っ当な理屈で地球侵略を開始するのです。しかも第20話まで番組タイトルを彼が保持し、以降中盤でもタイトルから名前が消えません。ゴメス同様、ブームの先頭に悪役が席巻してます。
しかし制作サイドの凝りようが凝りすぎで、ゴリと戦う巨大ヒーローが脇役と言うのはともかく、彼、スペクトルマンの造形はかっこいいのか悪いのか、無理やり脳内補正をかけないと見ていられないし、なんでまた「鼻筋が通っているのに過労極まるような眼」をデザインしてしまったのか、当時は理解できませんでした。4月から放送の始まった「帰ってきたウルトラマン」が、いかに安心して見ていられる造形だったかが思い出されます。
ところで、今でこそ「スーパー戦隊シリーズ」の原典となっている「秘密戦隊ゴレンジャー」は、次作の「ジャッカー電撃隊」とともに、しばらくの間シリーズには加えられない別枠番組でした。シリーズ中何作かは3番目の「バトルフィーバーJから数えて〇〇作記念」などとも言われています。打ち切ったり(ジャッカー)再編されたりの受難戦隊でもありますが、78年にのみスーパー戦隊不在の時期があるというのが大人の事情でした。
そこへきて2021年の45作目にあたる「機械戦隊ゼンカイジャー」(ゼンカイジャーって・・・遊技業界にローカルヒーローがいなかったか?)。戦隊お約束のセオリー打破だというこのなんでもありな、アカレンジャーとビッグ・ワンと仮面ライダーマッハとレスキューポリスと、ひょっとしたら機動戦士ガンダムまでもを煮込んだ闇鍋のようなアイデアは、怪獣じゃないけどまさに無双の時代です。でも昨今の仮面ライダーよりはましだという気がする。