僕ではなく、霰にとっての曾祖母のことで、家内の父の母が戦争時の疎開後、職場として通っていたのが、旧常陸北条郵便局。ファザードが洋風、奥向きが和風建築の融合という風変わりな建物は14年とちょっと前から、ポステンという名のカフェにリノベーションされています。そういう割には娘らを連れて行ったことがなかったと思い至り、霰の休み日に合わせて出かけてみました。週末休日は開店と同時に満席になってしまうので。
建築物としての登録有形文化財にも指定されている店内は、指定される以前から基本的にはご遠慮くださいのスタンスなので撮影はしません。オーダーした料理や飲み物は、周囲に配慮の上撮ることができます。でも撮るより食った方が断然良い。常陸牛のキーマカレーですけど玉ねぎが豊富に使われていてキーマっぽくない。いや、広大なインドにはスープカレーのようなキーマもあるらしいし、カレーのスパイスと玉ねぎの甘みが全妙な旨さです。
ベーコンレタスとチーズのサンドは、なんとぷりぷりなポークまで挟んでいるではないかと勘違いするほど、実は椎茸だったという食っている方が間抜けなだけの、それでもこれも旨いぞな献立。以前よりも品数は整理されましたが、こうした料理も店内維持管理も店主の椎名さんがほとんど一人でやっているため、対話をするにはタイミングが必要です。ぶっきらぼうとの評が多いですが、本当ははにかみ屋です。
さても元郵便局と電電公社の交換台であった建物は、この町で家内が生まれる少し前に現役を退き、ポステンの開業まで休眠しており、開業時の内外装改修でいくらか風合いは変わっています。有形文化財登録が開店よりも後年というのも、建物としては埋もれていたことを物語らせますが、戦争で亭主を失い、一男一女を連れて疎開し局員としてここに通っていた「霰の曾祖母」という不思議な縁の方が、我が家にとっては建築の価値よりも勝ります。