春分の初候を「雀始巣」(すずめ はじめて すくう)で迎えるのが21日。次候が26日の「桜始開」(さくら はじめて ひらく)で、末候として31日の「雷乃発声」(らい すなわち こえを はっす)に移り変わっていく3月下旬。旧暦だったら2月の頃の暦感覚です。この「七十二候」(しちじゅうにこう)は、もともと古代中国において用いられた季節「観」ですが、日本に持ち込まれてから風物の入れ替えなどが行われ、独自のアレンジがなされています。
中国版
初候 玄鳥至(げんちょう いたる):燕が南からやって来る
次候 雷乃発声(かみなり すなわち こえを はっす):遠くで雷の音がし始める
末候 始雷(はじめて いなびかりす):稲光が初めて光る
日本版
初候 雀始巣(すずめ はじめて すくう):雀が巣を構え始める
次候 桜始開(さくら はじめて ひらく):桜の花が咲き始める
末候 雷乃発声(らい すなわち こえを はっす):遠くで雷の音がし始める
地域差による風物の違いなのか、中国ではより早く燕がやってきます。だから日本にはまだ来ないので雀が用いられている。それよりも日本独自の風物が「桜始開」。実に風流な選択だと思います。
にもかかわらず花より団子にしてしまったのですが、いただき物の桜団子が、うちの近所ではちょっと珍しい、小豆餡を使っていない桜餡でした。香りは漬け込まれた桜の葉から漂い、餡は小豆のそれではない甘み。どこの製造かも記されていないので出自不明です。
桜餅と言えば、関東だと小麦粉ベースで平たい焼き物で小豆餡をくるみ桜の葉で包む「長命寺」、関西だともち米から作った道明寺粉ベースの「道明寺」と、これもまた地域性で全く異なるものが生まれ継承されています。関東でも伊豆や鎌倉だとさらに独自性を持った桜餅を見ますが、思いつき、と書いたら雑な印象になり、インスピレーションと綴ると新しい発想を感じてしまうのは、自分内の謎です。