「えっこれだけ?」と言いきってしまいましたが、NEXTGENERATIONパトレイバーのエピソード12には、特車2課整備班長のシバシゲオさんに続き、続きと言いながら「初めて」、回想や写真ではなく、物語の中に前シリーズの主要登場人物を繰り出しました(と書いて破綻に気がついた。エピソード1ですでに上海亭の親父が出ているし、4や8には公安の高畑が出ちゃってるんですが・・・主要じゃないと棚上げしよう)
国連難民救済機関に身を置き、中東で高等難民弁務官をつとめている。という噂については、エピソード0にて整備班長が語っていた、元特車2課第一小隊長、南雲しのぶさんです。
エピソード12の冒頭、ほんとにこれだけの出演でしたが、長編版「首都決戦」の劇場での予告編では、姿ではなく、あの凛とした声だけの場面が紹介されていました(当然ながらそれぞれ別人)
もう一人、世界観をつなぐキーパーソンとして登場したのが、便宜的に東京WAR(パトレイバー2)で特車2課と戦ったテロリストの柘植行人さん。後藤田隊長が収監先に面会に出向きます。
映画の話は5月に観てからでないと「またこの手の話か」以上のことを語れませんが、世界的なテロの変質が生じている現在、パトレイバーは今さらの駒ばかりを撃ちながら、皮肉なタイムリーでの長編版が巡ってきています。
そのあたりは5月まで待つとして、人気キャラと言われている南雲しのぶという女性の設定については諸説ありながらもNEXTGENERATION世界である2013年ならば40代後半。まあおば様なんですけど、あくまで推定で60年代半ばくらいの生まれだとすると、おっさんである僕らなら全然かわいらしい(注 とりあえず10歳刻みで世代ごとにかわいい感が存在します)のです。
警視庁きっての才媛であったはずの彼女が、出世の王道とも言われる警備部にもかかわらず島流しポストの特車2課勤務となっていた所以は、パトレイバー2において柘植さんとの過去が描かれたことで有名です。此岸と彼岸にあった二人は、事件の結末において再び引き裂かれるものの、その情念はしのぶさんを彼岸に行かせてしまった感があります。
しかし彼女が「首都決戦」に柘植派の一人として再登場するとは思えない。直感的に、この長編版は彼女をヒロインの位置に置いているからそれはないと、僕が勝手思っているだけのことですが。
総監督によれば、長編版は五人の女性たちの戦いなのだそうです。彼女を何番目に挙げるかはさておき、特車二課の泉野 明とカーシャことエカテリーナ・クラチェヴナ・カヌカエヴァ(いっぺん本名で書いてみたかった)、今作で女性キャラに改められた警視庁公安部の高畑 慧。という布陣に加えて本作で新たに、第二小隊が戦いに巻き込まれる事件の対戦相手、光学迷彩能力を持つ攻撃ヘリのパイロットとして灰原 零という女性が登場してきます。
この人・・・ひょっとしたら柘植行人の娘? 柘植さんの家庭については家族構成は語られていないのであてになりませんが、東京WARの頃だと十代半ば、柘植学校(多目的歩行機械運用研究準備会)の時代に十歳前後(演じている森カンナさんが二十代半ばなので)とすれば、この娘にとってレイバーという存在は家庭崩壊とその後の自身の人生をも狂わせた忌まわしい機械で、崩壊の引き金となっている南雲しのぶという女性こそが憎悪の対象なのです。
エピソード12において、しのぶさんは手紙を受け取り、後藤田隊長は「柘植の収監直後に一度だけ、女性が面会に来た」(ただし警察関係者との話)ことを監守から聞かされています。それぞれ、それは誰だったのか。すべて想像でしかありませんが、一千万都民を盾に取られて呼び寄せられようとしているのは、中東に此岸を求めながら彼岸にいるしのぶさんではないのかと思ってしまうのです。
もちろん灰原 零=柘植の娘という前提ありきですけど。ついでに、この娘が父親っ子で、とーちゃん憎しだけど憎み切れず「思想家としての教え子」を貫き修練していたという話が無ければ、思いっきりはずれの話ですけどね。