勇気ある看護師、無鉄砲なパン屋の店員。2人はともに7月7日を誕生日とするも、あるとき異次元人の侵略に遭遇しなければ、大いなる力を授けられるどころか出逢いすらなかった不思議な宿縁を秘めていました。北斗星司と南夕子。ひととき、2人にウルトラマンエースの力が授けられましたが、実は南夕子は怪獣ルナチクスに滅ぼされ(かけて)いた月星人。地球に出現したルナチクスを撃退した後、彼女は月から逃げ延びた仲間の居る冥王星に去っていくという驚きの展開でした。
ウルトラ世界観を研究したり評論する人々の中には、「南夕子こそ、ウルトラ兄弟がエースの力を与え、ルナチクスへの復讐を手助けしようとした人物」という説を唱える人がいます。北斗星司は、たまたま居合わせちゃって、超獣にタンクローリーで突っ込んじゃったんで、見るに見かねたウルトラ兄弟の救済枠に組み入れてもらえ、夕子の闘いに力を添えるためエースの相方に選ばれた。という一説は、2人の資質や立ち位置を思い出すと、はー、なるほどと思わせる面白さがあります。
むろんその説は、夕子が月からの亡命者で、使命を果して地球を去った。という展開を見てから成立するもので、夕子が物語から去るというシナリオは番組企画当初には存在しない設定ですから、2人が出逢った瞬間は、夕子は間違いなく福山市の病院に勤める7月7日生まれの看護師だったのです。とはいえ、様々な事情でこのようなドラマの切り替えを余儀なくされたことで、七夕の日が誕生日という2人には、ウルトラスケールの織姫と彦星にも似た間柄が生まれるのでした。
残念なことに夕子が地球を去るのは秋の満月。後のウルトラマンタロウに当人が客演するのも年末の餅つき。誕生日が同じ2人の設定は、この苦肉の策が無ければ活かされなかったと思われます。それにしても、ヘルメットを被る星光子さんは初々しさの中にもフジ隊員、アンヌ隊員、丘隊員よりも職業隊員な凛々しさがあります。彼女の娘である紫子さんが星司と夕子の娘「北斗七海」として登場した「大決戦!超ウルトラ8兄弟」では、往時の光子さんによく似ていて見とれたものです。