古本屋にふらっと立ち寄ったらワゴンセールで発見して、つい買ってきてしまった五木寛之さんの「風の王国」。文庫の初版本もハードカバーの大きいやつも所有しているのに、その場の出会いがしら感覚で手に取ってしまったわけです。
日本が近代化していく歴史の陰で、細い血脈と絆を紡ぎ社会の暗部に息づく知られざる王国。五木さんはサンカというまつろわぬ民をこの本で取り上げましたが、これがめっぽう面白い。
物語の冒頭、主人公は仁徳天皇陵に向かう途中、運転中のゲレンデヴァーゲンをパトロール中の警官に止められるところから始まるのですが、文庫版は物語よりちょっと後の1987年に初版出版されているので、アウトドアブームやRVブームの波が訪れていてタイムリーだったかもしれません。そこにウォーキングスポーツと、行者の歩業、奈良から大和路にかけての歴史の暗部、メルセデスの四駆だとかジムニー1000(これはセリフだけ)だとか、興味をひくガジェットがてんこ盛りです。
仁徳陵と聞いて、どんな本なのか概要見たら…
知ってる地名がモロ地元ですね…。
二上山横の国道なんて、高速代けちる為にしょっちゅう通ります。
メルセデスやマセラティが出てくるのは、主人公の現代人としての表現で、二上山や伊豆などの舞台には、主人公の「歩業」を通した古代人の資質を埋め込んだ仕掛けがあります。
サンカ、なんて世界は、ある意味異世界もののテイストですが、狭間に立たされた主人公の思考や行動がぐいぐいと引っ張っていく面白さがありますよ。