1月8日、というと、唐突ですが元フランス共和国大統領であったフランソワ・ミッテランさんの命日。ちょうど25年前の没です。職務はその前年に辞任していますが、前立腺を長く患っての逝去でした。といっても彼の話じゃなくて、彼が1988年に登用した、大統領の専属料理人ダニエル・デルプシュのこと。彼女は歴代初の大統領専属女性料理人で、お元気でいらっしゃいます。その伝記的でちょっとコメディな映画が、「大統領の料理人」(2012年)
彼女はそれまで南西部のペリゴール地方で、郷土料理学校とレストランを経営していたのですが、エリゼ宮での2年間、専属料理人を務めミッテランさんと交流した後、男社会であった職場とのあれこれやいざこざに嫌気がさして厨房を辞するのです。そこから各国をまわってトリュフ畑に適した土地を探し、ニュージーランドにその適地を見出し、資金を貯蓄するためフランス領であるクローゼー諸島のポセッション島にあるフランスの南極調査基地で1年間、料理人として活動します。
映画は、この80年代の2年間と00年代の南極調査基地勤務最終日が交互に描かれ、島を離れるところで終幕します。カトリーヌ・フロさんがダニエルをモデルとしたオルタンス・ラボリという名の料理人を演じ、映画にシフトするならオルタンスが島を去る際に、かつて務めたエリゼ宮を出ていくときミッテランさんに充てた手紙を回想するのですが、ミッテランさんは96年に亡くなっているので、その年月の流れが物寂しさを感じさせます。
彼女が新天地であるニュージーランドに向けて島を去るのが、だいたい2002年から3年あたりのことで、映画が2012年の公開。ここにもエリゼ宮の勤務から25年めの封切りという数字が見え隠れしています。で、なんでこんなことをESCLEVのカテゴリーで書いているかと言えば、ほんとにもう物語の側から見ればどうでもいいことなんですけど、冒頭、中盤、ラストの三度にわたって、ラジアントレッドマイカのビターラ或いはサイドキックが出ているのです。
オルタンスは、島では終始ハイラックス(の助手席)に乗っているので、このビターラは調査基地の誰かの所有ということになりますが、誰の所有かすらわからない。それくらいどうでもいい小道具にもかかわらず、「いる」という事実がうれしいじゃないのと(笑)。クローゼー諸島は強風が吹き、年間約300日くらい雨天気のどよんとした空模様の景色。大陸と違って氷には閉ざされていませんが、気温は夏場で18℃、冬場は5℃という環境だそうです。
実際、映像でも島の景色はずっと雲が低く垂れ込め強い風が流れるシチュエーションで、どうも現地まで持って行って撮影したみたい。これまた25年ちょっと前に出ていたV6エスクード時代のカタログに掲載されていた風景になんとなく似通った雰囲気です。ラジアントレッドマイカの車体色が、こういう曇天の空の下ではアクセントになって実に良い演出になっています。いやまあ、だからなんだよ?という話で、だからこそ表題がミッテランさんの浮世話に出てくる名言なんです。