「はやぶさ」の帰還から11年は、スペースシャトル退役からの10年でもあります。この短い年月も、技術の進歩は未来を手繰り寄せていました。宇宙往還機がロケットの姿に戻り、国家事業から民間ビジネスへと橋渡しされ、貨物から有人運搬へと、ステージの拡張が進んでいます。今後、スペースシャトルを知らないという少年少女はいなくとも、それを見たことのない世代は当たり前のように、クルードラゴンのような打ち上げと帰還を目の当たりにしていくのです。
それにしてもですよ。そのクルードラゴン(ドラゴン2)自体はロケットによる打ち上げ方式に後退したとはいえ、多段式のブースターは使い捨てではなく遠隔操作で回収され、しかも高圧噴射と姿勢制御によって地表に戻ってくる。
多くの人が「まるでひと昔前のSF映像みたいだ」と言っているように、まさにその空想科学がブレイクスルーした技術として実現しているのです。
再使用可能のロケット式宇宙往還機。このイメージを遡ると、僕の世代はおおむね(概ね、ですよ?)サンダーバード3号に行き当たるのです。現実の現代の往還機との違いは、多段式でなく単機であることが大きな違いですが、サンダーバードは1960年代に「100年先の未来」を描いていました。このことをさらに広げて考えてみると、ジェリー・アンダーソンの想像した世界を、現代の往還機は40年ほど前倒ししたことになります。
そうだとすると、ここから100年くらい未来を見ていく次世代の人々にとっては、今は計画が進んでいないJAXAの「リフティングボディ飛行実験計画LIFLEX 」だって、再使用宇宙往還機のひとつとして出来上がっていくかもしれない。早ければ50年後の人々が「ウルトラマンのジェットビートルや小型ビートルって、100年前に創造されていたんだ」と感じてくれるかもしれない。そんなことを考えてる本日が、初代「はやぶさ」の帰還日です。