朝ドラ「なつぞら」がいよいよアニメーション編に入って、前宣伝の頃から言われていたアニメーターへの成長譚に移っていきます。主人公・奥原なつのモデルに選ばれた昭和三十年代現役の女性原画家は奥山玲子さんで、動画会社の先輩原画家にもりやすじ(森康二)さんがいる時代。そういうデータが活字や絵によって僕の頭に入ってくるのは昭和五十年代になってからでしたが、この二人が原画を手掛けた「わんぱく王子の大蛇退治」は、総天然色絵本が物心ついた頃家にありました。
実際のアニメーションはずっとあとになって、上野かどこかの映画館で、祖父に連れられて見た記憶があるのですが、これがいつだったかはさすがに覚えていなくて、そのくせ内容は絵本で補完されるし何よりスサノオだのヤマタノオロチだのクシナダだのというキャラクターの動画がものすごくて、家で見ているテレビ漫画のそれとは段違いに動き、鮮烈に記憶に刻まれるのでした。
やれやれ、齢がわかるよ。
もりさんや奥山さんの時代というのは、大塚康夫さんあたりが若手のアニメーター。この映画ではスサノオが駆るアメノハヤコマとオロチ、スサノオの戦いが大塚さんたちの仕事ですが、それ以外にも波の情景、炎や氷の描写と、手描きアニメーションの技術には目を見張るものがあります。
こういうのを二つか三つの子供に見せちゃだめだよ(笑 いいのかそんなこと書いて)。一発でノックアウトされますよ。これだから僕の人生、作り手にこそならなかったけれどアニメーションと特撮の泥沼にはまっていくのは、間違いなく絵本を買ってきたはずの親父のせいです。
ただ、アニメの世界以上にのめり込んだのは、この映画が描いた日本神話の部分で、高校までは物書きの師匠の偏った講義、大学では単位の足しに民俗学を履修するに至って、今なお抜け出せていません。親父の狙いはむしろこっちにあったのではないかと思われますが、結局「学者じゃ食っていけんぞ」とか言いやがったのも親父です。
僕らの世代は少なからず、もりさんや奥山さんの描いたキャラクターでモノクロテレビアニメを見て育っているのですが、その時代を朝ドラがどこまでやってくれるのか興味津々で、そういうことを考えていて、つまり俺って遂に朝ドラ視聴者世代に突入したのかと自覚させられるのでした。
それはそれで癪に障るので、「なつぞら」は帰宅後に録画で、霰や霙も巻き添えにして観ているのです。