悟道の里山開山祭に呼ばれた帰路、久しぶりに駅前のお店に立ち寄り「河童店長」の朗らか且つ面妖ぶりを拝見しながら昼飯をと考え、里山で用意してくれていたひっつみ膳を丁重に辞して来てみれば・・・
おい! なんだよそれーっ
つい一カ月ほど前のことじゃありませんか。日付で想像するに、遠野祭りを見に来たお客を最後にもてなし、祭りの週末明けに店じまいされたようです。僕が若かった頃、すでに彼は遠野駅前でまだ人の姿でお店を出していたので、この街では立派な老舗だったのです。近年は河童の姿にまで勝手に身を変えてまで来訪者に笑いを振りまいていたのに、いったいどうしたことなのか。
お店の名前は昔から遠野っぽくないポップなネーミングでしたが、実はこれは彼のお姉さんの愛称を譲り受けたものだそうで、そのお姉さんがこの夏、鬼籍に入ったのだとか。どうやらそのことから大きな決断に至ったのだと、近隣の人と立ち話をさせていただく中でわかっていきました。
「祭りの週末はSL銀河も駅に来ていたから、店長は本当はそれに乗って帰りたかったんじゃないかなあ。お店の後片付けも残っていたから、そうもいかなかったと思いますよ」
もの哀しい話です。彼はきっとSL銀河のあとにやってきたであろう銀河鉄道に乗り込み、お姉さんの野辺送りのために遠野を離れて行ったのだと考えながら、僕も駅を後にするのでした。