十三代目 石川五ェ門だけの謎ではなく、「ルパン三世(のFirstシーズン)」全体にかかわるキーパーソンという話です。
という割にはいきなり峰不二子のキスマーク入り新聞の切り抜き。「カリオストロの城」の有名なシーンで、翌日のクラリスとカリオストロ伯爵の婚礼にバチカンから大司教が来る・・・と書かれているらしいあれです。大事なことは日付。1968年9月12日、つまりあの物語はこのガジェットから時代が判別できます。
だからどうした。という話ではあるのだけれど、この映画製作に関して宮崎駿監督は、ルパンを完結させるくらいの意図で、中年になって落ちぶれかけたようなルパンを描こうとした旨の発言を、当時しています。上映は1979年12月のこと。この映画は賛否二分し、その、中年で落ちぶれた、100円ライターを使うようなルパンは認めぬというファンの声が勝り、映画の出来に関わらず興行は振るわず、宮崎さん自身が干されていきます。
その後の映画の再評価はご周知のとおりですがちょっと待て。この石川五ェ門は、いったい誰なんです? と、いまさら何を言い出すんだな部分が謎なのです。石川五ェ門とルパンの邂逅は、Firstシーズンの第5話にあたるのですが、五ェ門が出るシーンの一つに、深夜放送を聴いている場面があります。彼の趣味の一つです。それはいいんだけれど、このとき流れる楽曲が小柳ルミ子の「お祭りの夜」、1971年9月に発売された2枚目のシングルレコードの収録です。
これはもう、同13話に出てきた魔毛狂介に頼んでタイムマシンで送ってもらったとしか思えない。この魔毛撃退の折にも、江戸時代のセットに翻弄された魔毛に「今は本当に寛永3年か?」と問われ、「今は昭和47年(1972年)でござる」と答えています。というわけで、「カリオストロの城」はルパンを終わらせるエピローグどころか、壮大なプロローグだったと解釈できるのに、68年の世界になぜ五ェ門が存在するのかというパラドックスをはらんでいたのです。
まあね、テレビシリーズと単発映画を無理やりくっつけて考えるなと言われればそれまでです。でも謎は謎です。
ところでその「カリオストロの城」では、五ェ門には「今宵の斬鉄剣は一味違うぞ」という名言がありますが、これもよく練り込まれた使い方で、実はそのセリフ、68年にタケヤみそが打ったCМで、森光子さんが言った「ひとあじちがいます」が、たぶん偶然ですが原典。