唐突に「サイボーグ009」第一期テレビアニメーションで描かれた「太平洋の亡霊」に触れるのですが、このエピソードがどんなものだったかについてはおおむねこんな感じ。なぜこのような話を、原作から外れて作ろうとしたのかはたぶんこんな意図。放送されたのが1968年7月19日のことで、戦後23年目の終戦の日を一か月ほど前にしたタイミングというのも、夏休み直前の少年少女にこれを見せて、翌日の学校で感想を語り合ってほしかったのかもしれません。
「009」はこの頃金曜日の放送で、翌日の土曜日はまだ週休二日制度の無かった時代でしたが、はて土曜日が普通の授業だったか終業式だったかの記憶はあやふや。だけど戦中派の子供として太平洋戦争の様々を吹き込まれていた僕らには、またいろいろとインパクトを与えていました。確かに教室で「昨日のゼロゼロナインってさー」という話題になったことは覚えています。なにしろ自分たちがひいきにしているテレビのヒーローが戦争を突き付けてきたのですから。
あれから「太平洋の亡霊」は再放送されるだけでなく東京の終夜上映アニメ映画プログラムにも組まれ、有志によるフィルム上映会などが繰り返されましたが最近の動向は知りません。などというところへ突如、「チャンピオンRED」での連載開始。長引くロシアとウクライナの戦争、中東の不穏な時勢に、果たして強いメッセージを投げかけてくれるのかどうか。60年代はまだ、戦争が少しだけ近くにあったのです。
あれをあえて書いた辻真先さんの単なるトレースで終わってほしくないのですが、この号には特別付録として辻さんによる当時の脚本が添えられていました。もちろん物語の原型ですから知っている場面通りに話は進んでいきます。
こちらは・・・たぶんそういったメッセージ性は極めて薄い、サイボーグ009誕生60年が主題となる、5月からの舞台上演。ゼロゼロナンバーサイボーグたちのキャスティングは難しいだろうなあと思いますが、実は役者が演じるものとしては2度目(だったとあやふやな記憶)。今回は逆転の発想で、60年代のアニメと言ったら少年主人公を女性声優が演じていたのと反対に、009役に元宝塚女優を持ってきました。この女優さん、確か水戸の出身。