すでに20年以上前のマンガとなってしまいましたが、この頃の新谷かおるさんは精力的にいろいろなジャンルの作品を世に送り出していました。
当時の連載マンガとして、モータースポーツの中でもWRCに特化したものは、「ガッデム」を別にするとほとんどなかったと思いますが、かなり無茶苦茶な拡大解釈と、そこはマンガよという開き直りを内包しながらも、エンターテイメントとして読むなら笑って読んでいられたので、気に入っている作品です。これが全5巻で500円ならお買い得。マイナーゆえか、5冊とも初版本でした。しかしあっという間に読み返してしまうのでやっぱり500円分か・・・
ここでなぜ4巻目を出しているかというと、物語後半のラリー競技車両として登場してくる「ミサワ・レベッカ1600GT」の生産ラインが、架空のメーカーであるミサワ自動車の仙台工場であるという描写があるためです。
主人公・轟ゲンは冒頭モンテカルロ、序盤サファリを走り、中盤でミサワのラレード1300GTでオリンパス・ラリーを戦うことになりますが、ほぼ量販車仕様で総合2位という成績をあげてしまったがために、過剰品質問題でミサワを窮地に陥れてしまいます。バックオーダーが殺到し、北米輸出枠を圧迫するためです。
ミサワはやむなくラレードの生産を打ち切り、新型のレベッカをデビューさせるためにWRC参戦シフトを社内プライベーターからワークス体制に切り変えて活路を見出そうとしますが、ホモロゲーションとして必要な生産台数が未消化の段階で、仙台工場が火災に見舞われ、その年内でのラリー出場ができなくなるというアクシデントを抱え込みます。ゲン以外の契約ドライバーが離反し、生産ラインの立て直しで社内はもめるわけですが、一連の窮地の中から、弱小メーカーならではの「乗って効くビタミン」というフレーズの誕生や、ゲンを取り巻くチームの結束が固まっていく展開を見せていき、レベッカは翌年のスウェーデン・ラリーに投入されていくのです。
ミサワというメーカーは、ダイハツとスズキを足して二で割ったようなポジションの設定で描かれていますが、オートバイでは世界的ブランド、国内では軽トラ専門という、こりゃやっぱりスズキのことじゃねーかという扱い(ただし、別のマンガではオーバー3リッターのエンジンを持っていて、これでル・マンに出ちゃうんですが)。「ガッデム」において実際に登場してくるのは高崎工場のテストコースと東京本社のみで、仙台工場はセリフと新聞記事描写でしか出ていないながら、「そうか仙台で新車作ってたんか」と、あらためてにやにやさせられました。
20数年前の仙台界隈に、どの程度の自動車メーカーが進出していたかは知らないのですが、最近の宮城県内ではトヨタ系の製造ラインを持つセントラル自動車が操業を開始したところで、先週はテレビニュースや新聞のトップ記事で盛大に取り上げられていました。