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  ~懲りない傾向~

支えてくれる人々

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本人に断わりもなく書くので細かいことは伏せなくてはなりませんが、エスクード仲間の何人かは、災害派遣の一員として被災地へ人材や資機材を送り込む仕事をこなしてくれています。そのうちの一人が、先日から石巻の被災地に赴き、現地にて被災者の救護関係の仕事をこなしてくれています。石巻なら、通常だったら小一時間の距離。まさかこんなときに「ひさしぶり、元気?」などと陣中見舞いに出かけるようなバカなことはできませんから、彼の活躍と怪我のないことを祈るばかりです。

先日のこと、「宮城県はまだ寒いですよね?」という電話をいただき、月末にこちらへやってくることを教えてもらって、こちらの気象や最低気温などの予想を提供しておりました。彼は茨城以北の東日本を知りません。彼だけでなく、そのチーム全員が全くこちらの地理も風土も知らないままに、めちゃくちゃに遠い土地から派遣されてくる。空路は良いとしても、そこから石巻までどうやって移動したらいいのか、そんな些細なことすら、事前に掌握するため情報収集していると話してくれましたが、

「いやほんとは、直に声を聴いて元気かどうかを確認したかったんですよ」

そう言ってもらえたら、派遣期間中のコンタクトができなくとも、こっちは百人力の応援をもらえた気分です。一人でも多くの現地の人々を助けてあげてください。

パン屋にて

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作戦室からほど近いところに、老舗のベーカリーがあって、ここの品物は基地へ帰るときに土産にしてもいいほどのうまいパンを出してくれます。被災直後から定休日以外はフル稼働してくれて、材料をやりくりしながら、何とか焼きたてのパンを売ってくれています。

当初の一週間は開店時間を限定しながら、パンの種類は選べなくとも5個を袋詰めしてワンコインにて軒先での販売でした。これを日に3回、一回の販売で300セットくらい焼くのだから、店のキャパシティはとうに越えているはずでした。2週目の後半からは開店時間は区切りつつ、店内で買い物ができるようになり、購入できるパンの数もひとり8個に増えました。遠くから買いに来て並ぶお客や、家族構成によってはありがたいシフトだと思ったのですが、やはりそれは品薄を呼び、次々と焼かれるパンもすぐに売れてしまう。

すると、この売り方に対して不満の声が上がりました。

すぐ前に並んでいたおばちゃんが、以前のような5個入りで売った方がたくさんの人に行き渡ると、店主に食って掛かりながら、数分ごとに後ろに並ぶ客にリピートするうえ、

「ねっ、そう思うでしょ」

と、僕も巻き添えに。いやその、販売の仕方はその方が合理的だけど、店の方針に対して唱える異について合意を求めないでほしい・・・

「あっ、それじゃあさ、僕も5個までしか買わないから、あなたも5個だけ買って、あとは後ろのお客さんに回してあげますか。少なくともそれで6個は役に立つじゃない」

僕は意地悪くもそう提案したのですが、目を丸くしたおばちゃんは、

「そ、そうね。そういう考え方もあるわね」

と言い捨てて、もうこちらを振り返ることはしませんでした。彼女がその提案に乗って、3個分の権利を放棄したかどうかは定かではありません。言ってしまった手前、僕は5個だけ買って店を出ましたが、その際に店主が小さくサムズアップしてくれたのは、ちょっと楽しくなる瞬間でした。

あまり語りたくないんですけど

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福島第一原発の事故に関連して、必ず画面に出てくる半径10キロとか30キロとかの同心円地図。あれってどういうわけか、福島県以南の地図としてしか表記されないのですが、関東地方よりも宮城県の方がはるかに近距離であることは誰でも知っている。仙台あたりで放射性物質が検出されないはずはなく、事実県内の女川原発だけでなく、仙台市内のビル街や東北大学などでのモニタリングポストも稼働し、数字は出ているのです。観測者側の発表では、人体への影響はなし、というレベルだそうですが、来ていることは事実。でもどんなメディアにも乗ってこない。見落としているものが多いのかなあ? 飯館村での非常事態が起きて、ようやく地図の広がりが出ましたけど、飯館だってそれ以前は箸にも棒にもかからなかったエリアです。

御   礼

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25日にお袋が緊急入院し、基地は多少混乱していましたが、今のところ大事には至らずすみそうとの連絡。胃潰瘍という初期診断と、その後の検査結果待ちです。

こんな状況であった週末、基地には補給物資を届けてくれる方々が現れ、家族一同、救われております。その報告を受け驚くばかりですが、遅ればせながら御礼申し上げます。首都圏まんべんなく混乱しているさ中だというのに、ありがとうございます。どうか、みなさんそれぞれの安全と安心も確保できますように。

炊事洗濯と掃除…は てきとー

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ここへきて金曜日の夜にいくらかとはいえ積雪を伴う雪が降る。例年並みなのか普段よりも寒いのかはわからないんですが、良いのか悪いのか悲喜こもごもな陽気です。避難所などは寒い思いをしているですから、彼岸過ぎたらそろそろ暖かくなってほしい。一方で、これだけ気温が低いと食料の日持ちに関しては少しだけありがたいことと、Yシャツくらいは二、三日着ていてもいいや(よくない)と、洗濯を多少なりとも引き延ばせるという点が幸いでした。それでもTシャツやら靴下やらパンツまでいつまでも放置しておけないので、たまった洗濯物を手洗いしました。手洗い、なんて聞こえはいいけれど、全自動洗濯機で30や40リットルもの水を消費しちゃって、実はまだ断水中なのよ、てなことになったらまずいだろうと、浴槽に汲み置きの水を使って風呂場での洗濯です。洗濯機は脱水時にその優れた能力を発揮しています。

都市ガスはまだ止まっているので、人間の方は洗濯不可能です。これはしかしシャツのように放置しておくとえらいことになるので、別手段でお湯を沸かして洗髪し、背中を流して乾布というより濡れタオル摩擦で汗を落としています。青葉区内といったら作並温泉まで行けば日帰り風呂を使えるのですが、仕事をやっていたら閉館時間までにたどり着けないのです。これは秋保温泉も同様。その他近傍の日帰り入浴受け入れ施設も夜遅くまではやっていません。

炊事はかなりいい加減で、耐熱容器にジャガイモを放り込んで電子レンジで加熱(容器に書いてある加熱時間って、あれ嘘っぱちだね)してみたり、レタスは無造作にむしり取ってドレッシングをかけてかじっているだけだったり、食パンをカップスープに浸して食ってみたりの、こんなの学生時代の「パンの耳で食いつなぎ1週間」以来だという横着さです。ごみを大量に出せないことや、卓上コンロで火を起こせるけれど、鍋やフライパンやらで油を豊富に使えない事情もあり、料理なんてやってらんねーという現実逃避をしてしまうのです。

ごみは出せないと言っておきながら、それでもごみが出てくる。リサイクル系の分別込は今のところ回収が中断されているので、これを大量に出さないように注意していますが、食材のパッケージの大半がこれで、買い物の仕方も気を付けないとだめかと、今さらながらに主婦や主夫をやっている人たちって、苦労と工夫をしているのだろうと再認識します。

あー・・・掃除しなくちゃな。と、これは思っているだけ。

きっと来る、春。

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自然って凄い、と思ったこの2週間。当たり前の日常が、実はとっても脆いという事もよく判りました。ガソリン狂騒曲に食料買占め騒動。灯りの点らない夜がかなり怖いって事も。

自分は何が出来るのかな?とりあえずのまちゃんは会社に乗っていってますが、帰るまで駐車場で日向ぼっこしてます。お昼休みの帰宅は徒歩。(だったら家に車置いて歩いて行けば・・・ってのは、不意打ちの〝御使い〟があるので出来ないのです)ガスでご飯炊いたり、煮物を新聞紙とタオルケットで包んで作ってみたり。節約(?)出来ることはやってみてます。何の役にも立たないと思うけど(苦笑)

うちの庭にも植えようかな。

写真はたまたま通りかかった、よそのお宅の角にあったプランター。スズランって、基地があるトコが合併する前の町の花でしたね。つい、立ち止まって見ちゃいました。

今の私は祈る事しか出来ませんが、被災された方々の平穏が少しでも早くかえってきますように・・・。

なるほどの群集心理

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昨日、日中に空きスケジュールができたので、週末の食料を買い出しにスーパーマーケットの列に並びました。被災後の最初の店開きの時には、開店前に4千人も並んだとか並ばなかったとか(いや、並ばなかったことはないんだよ)の、連日ンキロの行列も、さすがに今だと短くなっていました。小一時間で店内に入ることができ、食料品売り場に降りてみると

「そそそ、そうだったのかー」

潤沢なんてもんじゃない物量。制限のかかっているモノは牛乳といくつかの商品くらいで、マーガリンやバターは品切れながらも、肉も魚も野菜もちゃんとある。さらに言えば、被災したあとの秩序の維持がなんとかかんとかできている危うい状態でなかったら、なにもわざわざ入店制限するほどの混乱も起きないはず。乱暴な見方をしてしまえば、これ全部買い占められるやつなんていないよ、の物量でした。

日中並べていれば、買い出しに関してはなんとかなるんだ(今のところ、と付け加えておこう)。だけどこれは平日の日中という条件付けもあるのでしょう。事務所まで出てきていることも、物理的な距離を縮めているから、駅近くまで足を伸ばす気になれるのですが、仕事をしていては、毎回並ぶことは不可能です。ここはもう軟弱モノと言われようとも、作戦室に一度戻ってしまうと、もう一度出かけるなんて元気はなくなっちゃうのです。つくづくクルマ依存生活をしていたことを思い知らされます。

それにしても、群集心理の暴走を懸念しての入場制限は仕方がないとして、あれだけの物資があるのなら、本来は「通常営業しても誰の手にも品物は行き渡るよ」とも感じました。すべてかどうかはわからないけれど、ガソリンスタンドの混乱があらゆる小売業に飛び火しているような気がします。

帰還へ

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関東と東北のライフラインであるトラフィックもだいぶ回復してきました。本日から、職場の部下を交代で実家へ戻す作戦を開始します。皆、この二週間、よく踏ん張ってくれました。ようやく彼らを休ませてあげられる。

東北道も一般車両乗り入れが再開されましたが、これが完了するまで、もうちょっと踏みとどまらなくてはなりません。だけど現状のまま推移しても、車は置いて帰らなくちゃならないでしょうねえ。

繁華街のにぎわい

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この連休中、一番町や国分町のアーケードを中心に、飲食店の復旧開店も多くなりました。食材が傷まないうちに、あるいは尽きるまで、といった事情があるため、献立は限られていますが、一人で部屋でぼそぼそと食事するよりは、文明回帰の実感があります。それでも、お金もまた備蓄のひとつで少しずつ削られていくので、そう毎回外食をやっているわけにもいきません。

書店には、立ち読みのお客がたくさん。停電が復旧してもなお、先週あれだけ災害特番を見続ければ、それ以外の情報を欲するのは無理もないことか。しかし中旬ごろ発売の書籍は並んでいません。ドラッグストアや洋品店は、生活雑貨が相変わらず品薄です。ただ、足を伸ばしていないけれど、市場と呼ばれる商店街では、野菜も魚も手に入ります。

機能低下しつつも、被災地にあって繁華街がそのまま健在であることは、住民にとっては大きな拠り所です。構造物の損壊という見方でなら、インターネット上で見かけた水戸市の方が被害が大きい。つくばの独立行政法人が有する研究施設などは、聞くところによると被害の概算がおおざっぱに見ても400億を上回るとか。言い出したらきりがない復興への道のりでしょう。でも、街が残っているということに、何かを踏み出すための軸足が使えると思えるのは、きっと励みになるのではないかと思います。

老夫婦

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事務所の入っているビルは、表玄関のシャッターが下ろされ、店子は裏口から出入りしています。事務所の窓は割れずに済みましたが、上のフロアでは砕けたガラスが道路に落下し、被災直後は危険な状態。屋内のあちこちに亀裂も入って、さらにデンジャラスな環境となっています。

環境と言えば、仙台の事務所はビルごと禁煙で、1階にのみ空気清浄器を備えた喫煙室があります。このため、赴任以来、煙草を吸う本数がいくらか減っているのはいいことと言えば良いのですが、まあ、1日に何本かは吸いに行きます。

その日、階下の喫煙室に入ったら、見慣れない先客が、フロアの隅にうずくまるように座っている。目が合ったとたんに「しまった」という表情をされたのだけれど、こちらはビルの持ち主でもないし、この先客の老夫婦がフロア内のコンセントを無断借用して携帯電話の充電をしていたことはすぐにわかっても、それをとがめだてする義務も必要も覚えませんでした。

どちらからいらしたのかと聞いてみると、普段、車なら20分ほどの郊外から、買い出しに出てきたらしく、切れてしまった携帯電話の電池をどこかでチャージしたかったと、申し訳なさそうに話してくれました。お住まいは郊外の団地ゆえに、まだライフラインが落ちたままだという。しかも現状、そのあたりは市内でも通話圏外になっているところです。かなり不安だったはず。

しかもこのご夫婦、以前は四国にお住まいで、あの阪神・淡路大震災を経験しており、こちらに引っ越してきた年に岩手・宮城内陸地震に遭っているという。お歳のことは聞かなかったけれど、たぶん子供のころに戦争も体験した世代でしょう。それは大変な境遇だなあと、知人のふりをして話し込むことにして、他の事務所の人が入ってきても不審な目で見られないように、重電の時間おつきあいしていました。震災さえなければ、それぞれ住みやすいところだったと、四国の街と仙台の郊外とを語ってくれる口調は、やっぱりカラ元気。でもあなた方はお二人でいられるからうらやましいですよと、僕。

なんだかどうでもいいようなことばかりしゃべってしまってましたが、少しくらいは励ましになれたですかねえ。