Trend-Blue

  ~懲りない傾向~

老夫婦

4 Comments »

事務所の入っているビルは、表玄関のシャッターが下ろされ、店子は裏口から出入りしています。事務所の窓は割れずに済みましたが、上のフロアでは砕けたガラスが道路に落下し、被災直後は危険な状態。屋内のあちこちに亀裂も入って、さらにデンジャラスな環境となっています。

環境と言えば、仙台の事務所はビルごと禁煙で、1階にのみ空気清浄器を備えた喫煙室があります。このため、赴任以来、煙草を吸う本数がいくらか減っているのはいいことと言えば良いのですが、まあ、1日に何本かは吸いに行きます。

その日、階下の喫煙室に入ったら、見慣れない先客が、フロアの隅にうずくまるように座っている。目が合ったとたんに「しまった」という表情をされたのだけれど、こちらはビルの持ち主でもないし、この先客の老夫婦がフロア内のコンセントを無断借用して携帯電話の充電をしていたことはすぐにわかっても、それをとがめだてする義務も必要も覚えませんでした。

どちらからいらしたのかと聞いてみると、普段、車なら20分ほどの郊外から、買い出しに出てきたらしく、切れてしまった携帯電話の電池をどこかでチャージしたかったと、申し訳なさそうに話してくれました。お住まいは郊外の団地ゆえに、まだライフラインが落ちたままだという。しかも現状、そのあたりは市内でも通話圏外になっているところです。かなり不安だったはず。

しかもこのご夫婦、以前は四国にお住まいで、あの阪神・淡路大震災を経験しており、こちらに引っ越してきた年に岩手・宮城内陸地震に遭っているという。お歳のことは聞かなかったけれど、たぶん子供のころに戦争も体験した世代でしょう。それは大変な境遇だなあと、知人のふりをして話し込むことにして、他の事務所の人が入ってきても不審な目で見られないように、重電の時間おつきあいしていました。震災さえなければ、それぞれ住みやすいところだったと、四国の街と仙台の郊外とを語ってくれる口調は、やっぱりカラ元気。でもあなた方はお二人でいられるからうらやましいですよと、僕。

なんだかどうでもいいようなことばかりしゃべってしまってましたが、少しくらいは励ましになれたですかねえ。