JXCD2013年シーズンの渦中に栗を拾いに行ったTeam WESTWIN の後藤誠司選手は、予想以上に大きな栗を拾ったらしく
「もうビッグりです」
と言ったかどうかは知りませんが、冗談も車も滑りまくる激闘を展開しました。何が大きな栗だったかって、広島で待ち受けていた白いTA51Wの4AT。もともとテンロクエスクードで参戦していたチームだそうですが、その01Wを2000にスイッチし、さらにクラスごとに得意領域を持つドライバーが交替する戦略。
従前からエスクードの戦闘力を知っているドライバーと、JXCDではディーゼルクラスでデリカを縦横無尽に走らせていたもう1人の王者という対戦相手に、武者修行とはいえ九州最速の看板を背負っての遠征ですから、後藤選手も気負いが大きくなってしまうのでした。
午前中のタイムアタックではエスクード対エスクードの構図をどんな具合で脳裏に描いていたのか、タイトコーナーでスピン。この痛恨事で5秒を落とすという窮地に陥り、相手の心理戦にまんまと引っかかってしまいました。
「まったく、打倒エスクードをエスクードで持ってこられたとたんにこんな具合ですから、川添君の爪の垢でも飲ませにゃいかんです」
島監督によると、同型のエスクードを投入してきたのはチーム林笑店で、Team WESTWINの存在も今回のエントリーも知っており、51Wを最近手に入れて足回りと排気系に手を入れているとか。その意味では、後藤・川添両名の知名度は九州の外にも広がっていることは間違いないようです。
このタイムによって挑んだ無差別級のP2クラスは、4000ccにまでパワーを上げたパジェロエボリューションが制し、2位をギッピーオフロードのJB43が獲得。後藤選手は辛くも3位に食い込んでいます。
「JBと言いますけど、M18を2000ccまでボアアップしていたり、ボディはジムニーだけどフレームがエスクードだったり、まさしくなんでもありのクラスです。林笑店さんのエスクードは、タイムアタック時にタイヤをバーストさせた。それがなければもっと余力をもって決勝に臨めたはず」
島監督は、自らのチームがそうであるように、エンジン自体に手を入れていない林商店のエスクードと、それを操るドライバーの技量に注目していました。
P1クラスは、ベスト4まで残った後藤選手を、小排気量だけれど改造車というメリットを生かしたジムニー勢が戦うこととなり、後藤選手のエスクードは結果的には3位にとどまりました。エリアが変われば相手も変わるし、全国区に近づけばそれだけ戦闘力の強い車が待ち受けているということです。
「それにしても、P1クラスに出てきたジムニーの大半がギッピーオフロードのチューンを受けている。関東では磯田(貞治)さんが再びエスクードで出場していますが、ここまで改造レベルが上がっていると、磯田さんのテンロクエスクードがPクラスでも上位にいることに、学ぶべきものがあります」
広島でのパワー競争を経験した島監督に今後の展望を聞いてみると、
「うちの車はまだ伸びしろがありますよ。エンジンをどうこう言う前に、煮詰めるメニューがまだ残っています。後藤君や川添君のパイロットに合わせて、それぞれの車のセッティングを高めていきます。あれだけすごい車の中に切り込んで3位に入っているという点で、今回の修行は得たものが大きい」
まだまだマイノリティではありますが、エスクードに対してエスクードをぶつけてくるムーブメントが起き、リッタージムニーの領域でもエスクードの骨格を流用するという手法が存在することは、Team WESTWINにとっては厄介ごと。しかし彼らは、そのような流れを歓迎しています。そこが彼らの熱いところでしょう。