Trend-Blue

  ~懲りない傾向~

近未来への予感と期待

近未来への予感と期待 はコメントを受け付けていません

破壊「キカイダーREBOOT」を観る前に、この映画を単純なヒーローものとして看過してしまうのではなく、キカイダーの世界観で語られている善と悪の拮抗、完全ならば悪に屈しない(と思われる)良心回路、真逆の悪魔回路といった、人造人間がこの世に存在する意義や自己矛盾への葛藤を、あとの作品につなげられたらいいかもなあと思っています。ジロ―の不完全な良心回路がどのように解釈されるのかが関心事ですから、40年経つとこう変わるのかと感じさせられる展開を見たい。その点、ハカイダーは「敵はキカイダーただ一人、キカイダーの完全破壊」という絶対命令に対して、40年前の彼自身が実に忠実に行動しました。

今作のハカイダーがどうなのかは知りませんが、以前の彼は「改造人間」という設定に疑問を持たざるを得なかったのです。そこはおそらくアンドロイドのボディに補助制御機構として人間の脳髄を搭載したから、人造人間とは一線を引いているのでしょう。ならばその脳髄の思考を制御する仕組みが必要で、それこそが悪魔回路だと考えてきました。

これ(悪魔回路)はけっこう良く練り込まれた設定で、ギル教授が「なんか思い切り強いのを作っちゃったが、こいつが儂に刃向ってきたらまずいぞ」と、いわゆるフランケンシュタインコンプレックスを抱いてしまったため、とりあえず造物主に危害を及ぼさない対策として、アシモフのロボット工学三原則も一部改良し(人間、という項目をギルに置き換えて)組み込んで制御プログラムを作ってみたけど、今度はハカイダーの主電子頭脳がフレーム問題を起こしてフリーズしてしまったので、仕方なく人間の脳髄で補完しようとした。

「いや待て、それではつまらぬ良心の呵責が起こるのではないか?」ってことで、電子頭脳と脳髄を仲介する機構として、フレーム問題を解消するための絶対命令を促す悪魔回路を追加したと。そこで放たれる命令は「キカイダーの破壊」だけです。あとは何をやろうとかまわない。案の定、ハカイダーはジローの追跡と破壊に関して専念するわけですが、それを優先するため危害は加えないもののギルの言うことを聞かない始末。

その上ギルは赤地雷ガマにキカイダーを破壊させてしまうという最大のミスをやらかしてしまい、目的を失ったハカイダーは最初の命令処理に苛まれてギルに憎悪を向けていきました。

40年前にはそこまで理解できる知識を持ち合わせていなかったけれど、たぶん機械の思考回路が持つであろう矛盾と破滅を表現していたのでしょう。ジロ―の良心回路も、おそらくフィルターとして「悪い命令は聞かない」というフレーム問題解消のための振り分け項目が多すぎ、その解決策を見出さないままだったために不完全であったのかもしれません。

こうした部分の掘り下げがどのように描かれるのかが関心事ですが、これ1作で終わってしまうのももったいない。いやなにも、01編を見たいというのではありません。もう一体の素材の活躍を見てみたいのであります。いやいや、漫画版に登場した00(ダブルオー)だとか、ロボット刑事のことじゃないんです(あ、でも、ロボット刑事は映像化されそうだよね)

成原万能工学研究所が作り出した28体めと29体めのアンドロイドがいるじゃありませんか。いまこそあれを特撮で!・・・