VITARAにまつわるモーターショー話題も一段落し、大方の意見が「このモデルがどんな市場を狙ってのことなのかさっぱりわからない」というところに落ち着いたようです。
さもありなん。素人目にも、歴代エスクードの開発陣と比較しても、論旨にまとまりも芯もないコメントなうえ、明らかにされている情報も少ない。マスメディアだって扱いには困るはずです。ただ、想像や妄想で記事は書けないにせよ、「早々とそんなもんにまとめちゃうの?」とも思えるのがメディアの総括。スズキ自身の産みの苦しみは、そんなもんじゃすまないような気がするのです。
1600ccクラスで約1.3トンくらいの、SX4や2代目エスクード並みの大きさとして開発されているVITARAは、基本的にはFF。allgripと呼ばれる電子制御4WDはメーカーオプションであり、この車の素性はこの時点ではSUVの姿をした、当たり前のステーションワゴンです。
このSUVという言葉に万能性を期待していくのは、もうそれ自体が陳腐な時代と言うべきで、むしろスポーツステーションワゴンと素直に言ったらいいじゃないのと、受け手が変革をした方が良いのです。荒れ地を走りに行くような車じゃない。非日常ではなく、日常を楽しく過ごせるクルマでいいじゃないかということです。
メーカーの思惑を擁護するなら、ね。
ここに産みの苦しみがあるわけで、そんな凡庸な車でどうすんだよという声は、社内的には大きいでしょう。それは一つの選択肢で、「それじゃあカリカリのカッ飛びで」「何を言うか、奥さんだって乗りやすいスタビリティ重視だろ」といった意見がガチンコでぶつかっているから、車自体の方向性が、実はプロモーション映像に反映できずによくわからないモデルという立ち位置になっているような気がします。
これ、時期的にはもう試作車による実走テストは行われているはずで、その試作車自体はカリカリ仕様ではないかと思います。そうでなければ役員レベルにアピール出来ないもの。で、試走した様々な陣営の中から「ちょっと待て、面白すぎるけどこんなんでいいわけないだろ」と待ったの声も出てしまって、曖昧模糊の中で見切り発車したのがパリ・モーターショーだったのではないでしょうか。それならば、CGだらけのはったり映像にもうなづけるのです。
仮に、ですが、国内投入を視野に入れているとすれば、テンロクでスポーティーなハッチバックといったら、20年から30年を先祖返りしてのホットハッチ時代の再来。クロカン四駆だとかミニバンだとかはもうどうでもいいカテゴリーです。そこには現在、スイフトスポーツという先人があるわけですが、オプションとはいえallgripを搭載することでスイフトスポーツにはないジャンルに拡張可能。そのためのSX4ベースでエスクード風という胡散臭さが苗床になっているのです。
では国内投入の目があるのか? それはあのデザインが物語っています。一番わかりやすい比較は、マツダの車と比べればわかることで、どう考えてもヨーロッパ受けするデザインじゃない。アジアやアセアン方面の顔立ちであり、日本人が安心するデザインです。それだけにヨーロッパで大丈夫かなあという心配もありますから、営業さんには二枚舌三枚舌で戦ってほしいところです。
しかしそれだけカリカリチューンで日本の環境基準や燃費基準にすり合わせてくるとしたら、ディーゼルだのなんとかアク・・・とか言われるのは心外でしょう。いらないよ、そんなエンジン。そう切り替えしてほしいところです。だけどテンロク? それってスズキのエンジン整理に引っかかってくる排気量なわけで・・・
あー、長くなったからエンジンの妄想はそのうちやりましょう。