エスクードにV6エンジンが搭載されたのは1994年のことでしたが、当時は事前に流れていた雑誌の記事が半信半疑でしか読めなかったのです。ライトクロカンを売りにしていたテンロクの車体に、そんなものが載っかるのか? としか思えなかったのです。
この時期、SUZUKIは既にV6で3リッターというエンジンコンセプトの提案モデルを発表したあとだったはずでしたが、話題に出てきたのは2リッターのV6。なぜだろうと首をかしげつつ待つこと1年。蓋が開いたら、H20A搭載の11Wシリーズがデビューしました。1990年代の中盤は、同クラスで2リッター越えというRVが他社から台頭してきたため、ライトウェイト路線からパワー競争に引きずられてしまったのが、エスクードの宿命でした。
このV型エンジンのバンク角やボア・ストロークは偶然にも、この頃マツダからリリースされていたユーノス500や、ランティスなどのV6と同じでした。排気量のラインナップはマツダの方が幅広かったものの、エスクードもH20Aのエンジンブロックで、後の三代目までに2.5、2.7まで拡張することになります。そしてV6搭載のエスクードと同時にマツダのRF型ディーゼル搭載車も発表され、31Wシリーズ(二代目で32W)として世に出ていき、マツダ側からはプロシードレバンテとしてOEM販売されました。
ディーゼル搭載のエスクードとレバンテは、メーカーのコメントとしては「ガソリンの手に入りにくい国や地域でのニーズを満たす」というものでしたが、国内においてはその燃料代の安さに対するアピールはそれほど行われなかった。営業的にもV6の話題に乗じてガソリン車を積極的に売り出していました。この世代の四駆やトラックに対して、ディーゼルエンジンへの規制が厳しくなっていくことも予見されていて、消極的にならざるを得なかったのかもしれません。
そんな時代を経て、早くも20年近くが経過して、現在のクリーンディーゼルエンジンは、エコロジーの追求によって、ハイブリッド車と対峙できるほどに進化しました。現行エスクードにも、海外仕様ならば1.9リッターのディーゼルがありますが、どうもこのエンジンは、国土交通省の認定を取れなかったらしく、搭載車は日本国内には卸されていません。
ここから妄想ですが、このところ対話するクルマ雑誌関係の人たちが、やたらとスカイアクティヴの2.2ディーゼルを褒めちぎる。あれがエスクードに載れば、お客は帰ってくる。とまで言われる。どんな客層を想定しているのかが、長年エスクードに乗っている身としてはよくわからないのだけれど、つまりは燃費と経済性の話という意味で、顧客を呼び戻せるということなのでしょう。
いまさら車体のコンパクト化が出来るわけでもなく、悲しいほどに走行性能よりも燃費の話題しか出てこないユーザーコメントに埋もれていくなら、いっそ、もう一度OEMという手法をマツダと行ってもいいのではないか。もっとも、そんなのはメーカーのプライドにも関わる話で、エスクードのV6は初代においてはあっというまに主力を自社開発であるJ20Aの直四に譲っています。最大排気量となった3.2のN32Aも、基本設計はGMであり、他の事情も重なり短命に終わりました。
どうなんだ? 載せる気あるのか?ディーゼルエンジン。それを5型とするのか、よもやの6型か四代目とするのかまでは、妄想しきれませんけど、スペアタイヤレスにするとかしちゃったとかよりも、ずっと重要なポイントのような気がします。
誤解のないように記すると、写真はことしのジュネーヴショーに出ていたグランドビターラでガソリンエンジン。この車体はスペアタイヤを背負っています。が、昨年の出品車は背負っていなかったのです。タイヤを背負っていない仕様は、海外では既に登場していて、4年ほど前には国内のラインで組んでいた話も聞いておりました。