1995年の7月23日、ふたりのアメリカ人観測者によって公式に発見された彗星「C/1995 01」は、我々の間においては『ヘール・ボップ彗星』としてその名前を記憶にとどめるばかりか、その頃から約18か月ちょっとの期間、肉眼での目視も可能なほど明るい天文現象を見せていきました。このとき、彗星の位置は木星と土星の間あたりと観測されていたので、天文単位の距離があてはめられるほどの遠さにもかかわらず、彗星核の巨大さから観測が容易なほど明るかったのです。
彗星核の大きさは約50kmと言われ、ハレー彗星の3倍にもなる、20世紀においては最大級の規模。翌年の夏ごろから肉眼で見えるようになり、97年4月に近日点を通過した際には「The Great Comet of 1997」という新たな異名も付けられておりました。地球との最接近距離では約2億kmのところをかすめていくわけですが、この距離だと大抵の彗星は近日点辺りで見えるか見えないかの小さなもので、ヘール・ボップ彗星は断トツに大きく明るく、北半球では一晩中目視観測できたのです。
これだけスケールが大きいと、いろいろなデマや流言が飛び交い、地域によってはパニック騒動にまで発展したと記録が残されていますが、宇宙の蛮族みたいな大艦隊が攻めてくるようなことはなく、やがて遠ざかっていき、人々の記憶からも薄れて行ったのですが、この彗星が世間の話題に上っている期間、我が家では95年に霰が、97年に霙が生まれており、無軌道だったとーちゃんの軌道をまとめさせるという20世紀最大の出来事を記録するのでした。