先日、あらためて「風花」に登場したエスクードノマドの観察をしたので、このノマドが直後に撮られた「花」にも出ている関係から、ソフトを引っ張り出してみました。
前者は相米慎二監督の遺作で、後者は「風花」が日本で公開された翌年の封切りでした。「花」は相米氏を仰いだ西谷真一氏の初監督作品。「風花」へのオマージュと相米氏への鎮魂として作られたとも言われています。
どちらの映画にも出ているノマドは、これまでにも紹介した通り同一個体を映画のテーマに合わせて塗り直したもの。ただ、「花」ではセンターコンソール上部の方位計・温度計といったマルチメーターユニットが外されていました。それは些細なことなので追跡しません。「風花」ではカメラに対して左後方からフレームに入ってくる後ろ姿が最初のシーン。「花」ではロードムービーの出発点となる日本橋での後ろ姿から登場します。
「花」はこのあと「風花」をオマージュするように、ただし左後方から接近してくる姿を撮影しています。これらを撮影しているのは、西谷監督が招集した「相米組」の面々。クランクインは2002年4月7日で、相米氏が急逝されてから7か月後。極めて短期間で企画制作が立ち上がっていますが、短期間だったからこそエスクードの引き続き手配が可能だったのでしょう。この手の小道具、1年以上放置しておいたら維持費問題から高確率で処分されてしまうでしょう。
「花」の構造は日本橋から指宿までを走るロードムービー。「風花」は北海道内を走っていますが、単なる移動手段の表現でロードムービーとは言えないといった声もありました。その部分をこちらでは国道1から3号線を走りつなぐという説明と部分的な経由地描写でクリアしています。が、山陽本線にそんな駅がほんとにあるのか?(左の写真)というロケを実は枕崎駅の旧駅舎で行っていたり、大半が鹿児島で撮られているようです。クランクアップは4月27日。公開は翌年11月。
以前の記事で、原作を収録した短編集が2003年に出たと書いているのですが、この映画のメイキングではプロデューサーの田辺順子さんが相米氏の急逝後にそれを読んで企画に至ったと語られていて、いずれにしても原作と映画製作の年次がかみ合っていません。短編自体がどこかの媒体で出版前に発表されていたのでしょう。エスクードは2代目の後期時代でしたが、初代モデルが使われたことは、エスクードにとっても時期的にはラストチャンスでした。