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  ~懲りない傾向~

黎明編の記憶

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僕は手塚治虫さんの漫画をそれほど好きではなく、「ジャングル大帝」と「青いトリトン」を除くと、作品をしみじみと読んだことはありません。

だから「火の鳥」に至っては、何がどうなっているのかほとんど知らないのですが、1978年に公開された東宝映画の「黎明編」だけは、学校行事の映画鑑賞会で強制的に連れて行かれて、観ていました。

そこでも、火の鳥の物語としてではなく、邪馬台国の騒動(と、同国九州説をバックボーンとするフィクションの構成)に面白さを見出して観ていたのです。

映画は日本各地の様々な場所でロケ撮影されたと思われますが、その多くは、阿蘇において撮られていたはずです。その雄大な風景を、いつか眺めてみたいと思いながら、その後他力本願していた修学旅行に肩すかしを食わされ北海道に飛ばされ、なにしろめんどくさがりがたたって自走では行こうとしない(他の手段を考えろよ)

結果、ここまでやってくるのにン十年もかかってしまいました。しかも弾丸のタッチアンドゴーという、えらくもったいない立ち寄り。まあそれでも、その場所を走ってこられただけでも良かったことは大いによかったのですが。

翻って記憶を搾り出す「火の鳥 黎明編」。なんと、今では映像ソフトが無いらしく、リピートしたくてもできないらしい。その上、調べてみると、この映画に対する評は極めて低く、なんであんなもん作ったか理解できないというコメントが大半。良かったのはミシェル・ルグランのメインテーマと、コシノ・ジュンコの衣装くらいだと・・・

確かに記憶をたどれば、原作を知らないにせよ構成がちぐはぐだったり怒鳴り散らすようなオーバーアクションが鼻についたり、虫プロ側が担当した無理やりなアニメーションシーンの意味もない・・・としか思えないインサートなど、あんなのをよくもまあ谷川俊太郎さんは脚本に起こし、メガホンを執った市川崑さんに納得させたもんだわ。とは感じるものがあります。

ところが、原作を読んじゃいないけれども、失礼ながら当時のセンスで漫画を映画にすると、あんなもんじゃなかろうかと思うのです。そこは目をつむって(つむったら見えないからダメじゃないか?)、当時のあのキャストを思い返すと、とんでもなく豪華で、現在の俳優陣であれに匹敵することができるだろうかと考え込んでしまいます。今やったら女性陣の大半になんとかなんたらのアイドル軍勢がぞーろぞろと・・・それじゃだめだよなあ。

いやしかし、この素材は、もう一回取り上げてもいいじゃねーかと、僕は支持したい。役者の選定は好みによるのでほっときますが、あっちの国で「ロード・オブ・ザ・リング」(注意 音声がやかましいぞ)だの「太王四神記」(注意 音声がうるさいぞ)だの「レッドクリフ」だのを作られて、こっちじゃあんなのやそんなのしか作れないようでは、邦画の名折れじゃありませんか。

本音を言えば、別に「火の鳥」である必要はなくて、邪馬台国であるとか日本神話であるとかのジャンルで、物語を見たいだけなのかもしれませんが、「ヤマトタケルの冒険」を実写でやれちゃうとちょっとインモラルすぎなので、あれは長編漫画にリメイクしてもらうのが一番いいし、第一、アニメーションで見たいとは思わないのが、実際の阿蘇の火の国の風景です。