エスクードの歴代モデルには、大なり小なり、感動したり笑ったりの伝説がありますが、最も伝説と呼ぶにふさわしい個体には、その積算走行距離に587000キロというとてつもない数字を刻んだエスクードをあげています。
このエスクードは初期型のノマドで、兵庫県に所在していました。当時、300000キロでさえ果たせるのかどうかも分からなかった時代に、わずか8年ちょっとの年月で、このノマドは未だに破られない記録を樹立しています。しかし我々がその事実を知ったとき、ノマドはすでに下取りに出され海外へ出荷された後でした。よって1枚のスチルも残っていません。
ノマドの面倒を見ていたのは、10年ちょっと前まで尼崎に所在していたアリーナ店の店長、森さんで、彼が開設していたお店のサイトで紹介されていたものの、その情報は個体がノマドであることと、最終的な積算走行距離のみでした。
どんなノマドだったのか、どんな人が乗っていたのか。これは気になるじゃありませんか。その頃森さんは年に一度のスズキの招待で上京する折、足を伸ばしてつくばーど基地にも遊びに来てくれていたので、伝説のノマドについて話を聞くことができました。が、「この話は10年くらい寝かせておいてよ」という要請も賜り、昨年のエスクード誕生25周年記念企画まで、ウェブでの開示はしていませんでした。
そのエピソードに、少しだけ時系列の想像を加えてまとめたのが「ノマドの軌跡」です。結末だけは森さんとの協定でぼやかしていますが、まあほぼまとめの通りです。挿絵に使っているノマドは、この記事の挿絵も含めてすべて別のノマド達です。
自動車、というすべてのカテゴリーに拡張すれば、587000キロという数字はまだまだ取るに足らない距離であることは事実です。けれども、エスクードでそれが成されているという事実もまた、我々にとっては重要な要素を持つのです。90年代の末期に打ち立てられ、今なお破られない記録です。うちのBLUEらすかるが順調に走り続けても、あと2年強はかかるでしょう。
ひとつ残念なことは、このノマドのオーナーだった人とはコンタクトがとれないため、伝説のノマドをエスクードマイレッジに加えられないことです。