いがらしみきおさんといえば、僕の場合すでに「ぼのぼの」で知識が止まってしまったままでしたが、最近は宗教思想的な雑誌に連載を出し、東日本大震災から3年後の物語を描いているとか。その手の雑誌には手は出さないよと、またもやぼのぼのから先に進むことのない僕でしたが、手元に回ってきた一冊の冊子が、まるごといがらしさん執筆の漫画でした。宮城県に本社を置く建設会社が設立している一般社団法人の建設業協会が依頼した、震災直後の記録を基にした物語です。
地震、津波が不意に襲ってきたあの日、混乱と憔悴の中で、メディアのビジュアルに映し出されていたのは救助を展開する消防やレスキュー、そして自衛隊の姿でしたが、彼らがいち早く被災地に入れたのはなぜかと言えば、東北道が専有化され、国道4号や45号の津波堆積物、瓦礫がどかされていたからです。
被災直後にもかかわらず、なぜそれができたのか。誰がそれをやり遂げたのか。
請負業が基本の建設会社はそういった重要な事実をプロパガンダとすることを良しとしなかったため、まさしく知られざる記録となっています。今になってこのような冊子が作られるのは、ようやくそれを話題にしてもいいかなというムードが醸成されたことと、来年以降の復興予算枠がどうなっていくか、不安要素が出てきたからかもしれません。
この冊子は県内の学校や公的な機関、市町村に配られているようですが、それだけではだめではないか? 県境を越えたらニュースは流れていない。むしろよその土地でアピールした方が、記録と記憶は断片であっても伝わるという効果を得られると思います。