Trend-Blue

  ~懲りない傾向~

冬の終わりに ~車体色その1~

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被災地暮らしも先は長そうなので、何か新しいことに目を向けなくてはならないなと考え始めたら、何も思いつかない体たらくです。職場にあっては被災地の現実と対峙することばかりなので、少し逃避しておこうと、車体色に関するこじつけな雑記をやってみます。といっても、すべてのエスクードの車体色には言及できませんので、数回で打ち切りです。

1989年5月に登場した、ヘリーハンセンリミテッドには、ネプチューンダークブルーとインビエルノブルー・メタリックの2種類が用意されていました。ネプチューンとはローマ神話の海の神様(ギリシャ神話におけるポセイドン)

ヘリーハンセンリミテッドが、マリンスポーツブランドとのタイアップ特別限定車でしたから、このネーミングの車体色はストレートにわかりやすいです。まさか海王星にまで売り出そうとは考えていなかったと思いますが、アメリカのニュージャージー州には、やはり同じネプチューンという沿岸都市があるので、セールストークにはそのようなイメージ演出も引用されていたかもしれません(実際には当時、ディーラーの営業マンも「ヘリーハンセンって、何の会社?」「すいません、唐突な限定車なもので、よく知りません」というのが真実で、車体色のことなんかかけらも話題になりませんでした)

もう1種類のインビエルノブルー・メタリックは、その独特の淡いブルーが目を引き、「うちで乗っているJA71と同じ色じゃん」と思わされたのですが、ジムニーのときにはさほど興味を持たなかったこの車体色と不思議な響きの名前に、エスクードの購入時に調べていただいたことがあります。

「インビエルノというのは、古代スペイン語で冬を意味する言葉らしいですね。エスクードもスペイン語やポルトガル語から持ってきた名前ですから、そこにあやかってのカラーリングなのかな」

営業マンは納車の日にそのことを伝えてくれました。5月発表で、納車は6月の下旬でしたから、もうシャツを腕まくりして暮らしていたところへ、ずるっと季節ずれしたネーミングのエピソードでした。スペインもポルトガルも、北側は北緯42度くらいまである北半球だし、夏の特別仕様にこのネーミングは変だよねえと思ったのです。が、あとになって考えてみると、スペイン帝国の時代にさかのぼると、彼らは南米やメキシコをはじめ中央アメリカと北アメリカの一部などに進攻し、フィリピン、グアム、マリアナ諸島、北イタリアの一部、南イタリア、シシリー、北アフリカの一部、フランスとドイツの一部、ベルギー、ルクセンブルク、オランダまで領有しちゃうというとんでもない国家でした。

大航海時代、南半球の領地に立てば、彼らはこの時期、冬の青い空を眺めることとなったのですね。

すげー・・・ジムニーを買ったときにはまったく知りませんでしたが、エスクードとインビエルノブルーというカラーリングには、このような逸話を埋め込むことができたのです。ただし、へリーハンセン社の誕生は大航海時代よりもずっとあとのことで、しかも誕生の地はノルウェーです。当然、ブランドイメージの宣伝が優先されたので、冬だとか南半球だとかを連想するようなやつは、ひとりとしていなかったと思われます。

その上この色、歴代エスクードの限定車としては使いまわしを受けなかった希少な事例ですが、裏を返せば当時出ていたジムニーやアルト、エブリイなどに使われていた軽自動車用塗装タンクからの流用です。ついついそっちのほうに気を取られていて、色の名前に秘められたエピソードの価値観を見出すことができませんでした。うーん・・・惜しいことをした。