「エスクード クロスアドベンチャー」「クラムシェルタイプボンネット」といった検索キーワードで当ブログを引き当ててくる人が、今月に入ってから増えています。同じ年度末と言っても、ことしの場合は消費税率改定の年度明けを控えている分、新車購入や買い替えを検討する人は多いのかもしれないなと思いながらも、エスクードにもちゃんと潜在的な需要があるんだと感じさせられます。
その分、メーカーサイドからのマイナーチェンジや車両アピールの情報が何もありませんから、流れ流れてうちみたいなブログに来てしまったのだなと申し訳ない気持ちにもなります。
それでこの車どうなんだ? と聞かれた場合、逆にどんな使い方をするんですか? という対話ができないと、薦めていいのかよくないのかは判断ができないのも事実です。乗り心地が良いならセダンのサルーン、燃費が良いならハイブリッドモデルの車種、税制上のメリットなら軽自動車、荷物が積みたいならトラック、加減速とコーナリングのレスポンスを求めるならスポーツカー、荒れ地を走りたいなら重機です(すべて便宜的な引き合い)。SUVにあれもこれも期待するというのは難しいことで、こういうジャンルの車ほど全てにおいて中途半端なものは無いのです。
しかし中途半端になってしまうのはユーザーのニーズのハードルが高いからでもあり、それぞれ良いとこ取りを少しでもしなくてはと考えられているのがSUVといういい加減な車種カテゴリー。挙句の果てには「乗り手が使い道を考えて楽しむ」と逃げるしかなくなるのです(あ、少なくともメーカーは逃げ口上は打っておりませんよ)が、よくよく考えてみると、この手の車はライトバンを乗用車化したステーションワゴンに過ぎないということです。
一時期はここに作業車としての走破性を加えてクロスカントリー4WDがもてはやされたこともありますが、そこまでの性能を引き出すユーザー層は性能側に傾いていくので、自然とSUVからは離れていきます。他社の同カテゴリー車種が更なる迷宮にはまって「クロスオーバー」化しているのは、明らかにクロカン性能ではない価値観で顧客を囲い込む戦術ではないかと感じます。エスクードですら、ジムニーの価値観を引き立たせるための当て馬と言ってもいいかもしれません。
ただ、他社のクロスオーバー化によってSUVが流れていく方向は、かつての質実剛健な四駆が闊歩した時代にカジュアルな提案をしたエスクード自身がやってきたことです。この車は生まれてくるのが早すぎた(笑)。そしてカジュアルの中にそこそこの質実剛健を宿らせてきたことが、現在の姿。モデルチェンジをしないことが時代遅れのようにも見えながら、最低限の性能は保ち続けているのです(ただし多くの人々は車を燃費で語る傾向があるので、そこだけは及第点に至らない)
ついでに・・・というより何度目かのこととして言えば、2代目までのエスクードは、前後のサスペンション構造に一工夫したとはいえ骨格はジムニー譲りです。そのジムニーの骨格も厳密にはオリジナルではなく、もう50年近くラダーフレームと車体というほぼ同一の基本構造を使いまわしています。だからこそ、古いエスクードに愛着を持つ人はその部分や、直結丸出しの四駆とはいえFRと四駆とを使い分けられるところに傾倒するのですが、3代目エスクードはそれらを一新させた、他のプラットホームに依存しない優れものです。クロスアドベンチャーは装備において至れり尽くせりに近いわけで、今さら5MTが無いだの4ATじゃどうのと言っていないで、それを使って優雅にも快適にも機敏にも乗りこなしてほしいところです。マニュアルトランスミッションを崇拝する人には、その幻想からの解放を望みたい。
そいえば、クラムシェルのエンジンフードは、2代目では使われていないアイテムで、残念ながらこれをエスクードの遺伝情報とは言い難いと思っています。メリットがあるのかないのかと言えば、1枚板のパネルよりも重くなるけれど、いくらか頑丈さは出ているかもしれない。でも上下に長いエンジンブロックを収めるために、初代ではあれが必要だったし、デザイン上も変化をつけられたということでしょう。
乱暴な話ですが、現車を見てピンとこなかったら、縁が無いものだと思っていいのではないか。乗ってみないことにはその車の良さも悪さもわからないうえ、試乗だけで見切れるものではありません。高い買い物ですから悪さはあてがわれたくないですが、非の打ちどころのない車というのも見たことがありません。なにしろ僕は3代目エスクードを所有していませんから、この程度のことしかフォローできないのです。