「マイティジャック」の名シーンである出航場面は、オープニング映像としても有名ですが、第一話ではそのオープニング前のアバンで見せつけていました。これは1968年の映像で、円谷特撮としては前年の「ウルトラセブン」において、ウルトラホークの出撃シーンが先達として、遡れば「ウルトラマン」のジェットビートルといった映像の試みもありました。万能戦艦の出航は、それが全長235mという巨大さを表現する意図がうまくまとめられていたと思っています。
先に撮られているウルトラホークについては、まさしく「サンダーバード」を意識したカット割りに、管制室の実景を合成するといった凝りようですが、1号が全長40m級の大型機には見えにくい感も無かったわけではありません。それが235mにもなると、どこに置いてあってどんなプロセスで動き出して・・・などの場面設計と同時に、スケール感も考慮しなくてはならない。これを海底ドックから始めるとなると、そこまでMJメンバーはどうやって移動するか、ドックへの注水の水量をどのように見せるかまで積み上げる必要があり、それらがこの番組最高の見どころになっています。
ただし、東京の某所に集合をかけられ、メンバーがあちこちからそこへ駆けつけ、秘密裏に作られた移動レールカーで三浦半島まで移送され、ようやく乗り込んでからドック注水してフルゲージを待って出航し、離水するまで13分とちょっと。
ありえねー(笑)
ここからです。一度飛んでしまうと、敵組織が虎の子の空中戦艦を出してきてもスケール感が速度感の阻害要因になり、ミサイルの撃ち合いがまた凡庸になってしまいます。あまつさえメンバーが事件解決するためには艦外で戦わねばならないので、万能戦艦の出番は削られてしまいます。スパイアクションは面白かったけれど、僕らはたぶん、もっとたくさんのアングルから万能戦艦の活躍を見たかったのです。
これは次作の「戦え!マイティジャック」になっていくらか改善されたような気もしますが逆に、怪獣だの宇宙人だの巨大ロボだのをぞくぞく登場させやがって(笑)、子供をなめてんのかこのやろーっ という反感も持つのです。つまるところ「ウルトラ」以上にドラマと特撮を融合させるシリーズ構成者が必要で、脚本自体に関与していかないと、物語をもたせる尺は成立できないという大きな問題が見えているわけです。
「戦え!」において、そこをどうにか払拭できたと思えるのが、1クールと2クールのつなぎに放送された「マイティ号を取り返せ! 前後編」かなと、100%個人の趣味で引き合いに出してみます。Qの罠に誘い出された源田が艦を離れてしまい奪われてしまう。源田は漂流しながら近くに居合わせたヨットに辿り着き、どこかで見たことのありそうな謎の青年と出逢う。Qの手に落ちた万能戦艦は東京に襲来して霞が関ビルを突き破るなどの暴れ放題だが動力炉の異常で撤退。源田は仲間に叱責され単独で捜索に赴き、ちょっと都合良いけどQの基地を発見。ついでに謎の青年とも再会。しかしQにとらわれ動力炉の制御を迫られるがそこは秘密。
Qも馬鹿ではなく、源田の声を録音して声紋を使った制動起動の音声を流し再び出撃。その頃MJ本部では万能戦艦撃墜用のミサイル発射を決定。源田たちは艦内で銃撃戦をやらかし艦を奪還するもアンチミサイル発射回線を壊してしまい大ピンチ。そこで謎の青年は懐から・・・
多少の尺の都合にめをつむれば、この前後編はドラマと特撮が上手にまとめられています。回線修理のためにペンチを取り出す謎の青年が、ついこの前まで懐から赤いあれを出していた人だったというのも、遊び心全開です。ただこれは、「ウルトラセブン」という基礎情報を刷り込まれていたからこそ面白かったし、万能戦艦の出番が敵の手に落ちてからという、いろいろと禁じ手含みでもあります。強奪ではなく洋上で氷漬けにされるとか、別の客編にはまだ余地があるはずです。