さるムックによる往時のインプレッション記事ですが、かつてこれほどミスマッチな谷田部テストがあっただろうかという企画です。これが行われていた頃はまだ昭和。谷田部のオーバルトラックも健在でした。いまでもテストコースが当時のままであったら、三代目エスクードの企画本でなら必ずトライしていたことでしょうし、ほんとにバンクを走らせていただろうなと思わされます。
言うに及ばず、このエスクードは1型です。OHCの8バルブです。ATの車体はGMのそれを組んだ3速もの(でも手引書を見るとロックアップ式なのね)です。
およそテストコースで走らせた経験のある人といえば、メーカーサイドの人々だけでしょう。部外者では「こんなところに持ってきちゃって・・・」と、青ざめる人もまだいない時代でした。編集者だってノリだと思うのだけれど、出てきた数字のまとめ方に困ったのか、予想外にいい出来だったのかは謎です。
それでもライトウエートという前評判による「優れた高速加速性能」だとか、8バルブでロングストロークの意味するところに「低速から太いトルク」という言葉は、適切なところを見出しにしているのが感心です。
実際に1型に乗ったことのある人は、この手の記事には照れ笑いを浮かべるしかなかったのですが、上記の2点については偽りはありませんでした。この手の車で加速性能といっても、最高速度を競うレベルじゃないので、そっちは程度問題ですが、低速トルクの使いやすさは逸品だったのです。
今や谷田部は左の写真のようなバンク跡も削られてしまい、つくばエクスプレスの駅前開発が進んでいるようで進んでいない街と遺構の入り混じった風景。通りを流していても、初代とすれちがう機会はめっきり少なくなりました。