20年も経つと、建設機械も前後のキャタピラを可働させて立ってみたり、両腕でがれきや資材を持ったり切ったりするのです。1988年頃に描かれた、東京湾岸の巨大土木工事という世界観を背景としたロボットアニメの時代は、これはまだ技術的検討と構想の域でしたが、機動警察パトレイバーにおいては
「この物語はフィクションだが、10年後は定かではない」
と謳っていました。
「よーし、造っちゃる」
と、イングラムやレイバーの活躍する様に刺激された当時の若者は、その後技術屋になり、双腕建機を実用化させてしまったわけです。
最近、日立建機がリリースした新型双腕建機は、片方の腕で対象物を持ち上げ固定し、もう片方の腕のアタッチメントで、じゃまなケーブル類を切断したり、対象物自体を破砕する能力を有しています。
そういう細やかな作業って、人力でやってきたのだけれど、建機でおおざっぱに解体した後でないと人が現場に入れない。安全確認やら何やらで、作業の中断という時間的なロスが課題だったのです。これが救助作業現場だとして、作業がストップしてしまうのはやはりもどかしくなる。
その部分に技術的アプローチを重ねて開発されたのが、まさにレイバーの前身と言っても良いかもしれない双腕機。新エネルギー・産業技術総合開発機構の補助事業から生まれてきましたが、メカニズムもすごいけれど、これを操縦する際に使うOSの方もすごいと思う。プロト機を実際に見たのは昨年のことですが、作業環境の設定やフィールドの確保と実機操作によるデータ取りなどは、造っただけでは得られない。これを実際に使用する建設企業のノウハウが活かされています。
見る者の視覚的効果と影響も考慮して設計・デザインされていくパトレイバー・イングラムとは真逆の実用性ありきな、汎用土木作業機械の姿。むしろ、押井守さんなんかには、こういう無骨なやつのほうが好みなのだと思われますが、実写版で撮るという押井監督のパトレイバーって、どうするつもりなんでしょ?