細かいことは本日発売のスーパースージー081号掲載「九州かわら版」に書かれていますが、ウエストウインが繰り出す新たなダートトライアル用エスクードは、2代目2000ccショートボディのTA52W。川添哲郎選手がパイロットします。
「2代目ショートでのダートラと言えば、99年全日本ダートトライアル選手権の第1戦『RASCAL SPRING TRIALin三井』という準国内級レースで、田嶋 伸博さんが駆り出したことがありますね」
とは、このエスクードと同じモデルに乗っていた青影さんの談。当時は2代目エスクードのデビュー翌年で、モンスターでも新型エスクードとしてこれを投入、優勝をもぎ取っています。もうお分かりと思いますが、川添選手にTA52Wを扱ってもらうというシナリオには、この型式のエスクードで刻まれたダートトライアルの歴史が、かつての三井三池オートスポーツランド、つまり後にモビリティおおむたと呼ばれたコースで始まった故事にあやかる面もあるのです。おおむたでダートトライアルを育ててきたウエストウインにとって、数奇な運命の巡り合わせとなる1台です。
とはいうものの、すでに15年も前の話です。2代目エスクードがダートラを走って2位との差を4秒もちぎったことなど、誰も覚えていないと思います。なにしろ2代目はモデルとして不振に終わっていますから影が薄い。けれどもモンスターのエスクードなもんで、セリカやらポルシェやらを向こうに回してぶっちぎりに速いというのを、栃木県の丸和というダートトライアルコースのレースで見たことがあります(まあ中身がどうだったのかは知り得ない話ですが)し、アピオの尾上茂さんだって、終盤のパリ・ダカールラリーで使用したエスクードは2代目のボディでした。
このように闘う素地を持つ52Wを、ウエストウインが使わない手はありません。そしてウエストウインのエスクードは、これら2台の極めて特殊な車両たちに比べれば、より市販車に近いところでマシンを仕上げるのがひとつの美学といえます。
「試運転時はマイルドな車だなあと思ったんですが、ラック&ピニオンのステアリングと、リジットサスながら5リンクで固めたリアサスという部分に、川添くんのドラテクはうまく応答してくれるのではないか? そこが戦略です」
島雄司監督は、4月27日のTDA今シーズン開幕までにできることは少ないと言いながらも、まず車の特性に馴染んでもらうところから始めると展望を述べています。いずれにしても、あっと驚かせるという意味では、この上ない車種選択ですから、緒戦であっても気を抜けません。
これに対して、すっかり定着している初代エスクードのTA51Wを駆る後藤誠司選手も、同じエンジンを搭載していても戦闘力のわからない2代目には興味が尽きない様子です。エスクードにはエスクードをぶつける。昨シーズンは51W同士の戦いでしたが、今期はお互いのドライビングに適した別々のエスクード対決となります。後藤選手も天才的なセンスを保有していますから、下馬評としては五分五分と言いたいところです。
TDAも参加者が徐々に増えてきて、イベントとしての成長も好評ということですが、一方では勝ちに行くためのあの手この手が逆にステレオタイプ化されてきた部分も見受けられます。しかしこの手のイベントには、あえて話題を投入していく必要もあり、戦い方にも信念が欠かせません。ウエストウインがそういった部分も忘れていないところは、大いに讃えたいです。