ラジエターグリルのエンブレムかリアゲートのネームラベル、ホイールのセンターキャップを確認できなければ識別困難ですが、マツダプロシードレバンテ。この個体はスズキのV6ではなく、本家のRF型ディーゼルエンジンを搭載したTJ11Wです。
初代エスクードのビッグマイナーチェンジが行われたのは1994年のことですが、ディーゼルエンジンの供給元であるマツダに対してOEMモデルの提供を図ったのは95年、レバンテは2月20日にデビューを果たしました。
このモデルも本日、誕生20年を迎えます。ESCLEV的にはSX4‐SCROSSの発売などどうでもよい。レバンテの方が大事です。
ポピュラーなところでは、「地中海西部に吹きつける東風」というスペイン語から名付けられたものですが、言語はフランスの言葉でLevant(ルヴァン)で、レヴァントという発音は英語読みです。元の綴りには末尾のeは存在せず、さらにその語源の意味するところは仏語のlever「昇る」。Levantの場合は「太陽が昇る」と訳して差支えが無く、日本的に言えば「東方・日出る処」となるのです。
レバンテにはスペイン東部の地中海沿岸地域を示す意味もあります。これもレヴァントから始まった呼称で・・・というより、もうどちらも統一してレバンテで話を進めますが、東方貿易の繰り返された海洋都市圏であり、この東方貿易そのものがレバンテの由来に当ります。
世界史の中で「肥沃な三日月地帯」という言葉を習ったことがあると思いますが、古代オリエントの歴史的な地域名称。農耕の発祥の地でもあり、このエリアの西側がレバンテ地方です。
エスクード、という貨幣単位やヨーロッパ貴族の紋章を描く『楯』などに比べて、レバンテとは実にスケール感の大きなネーミングでした。97年後半から2001年までは2代目が流通しました。
当時、OEMに対する抵抗感はあまりなかったらしく、プロシードレバンテは巷ではけっこうな台数が走り回っていました。聞くところによると、エスクードよりも乗り出し価格が低かったとか。それでも中味はエスクードそのままですから、V6シリーズは高回転型でトルクバンドの狭い、回して面白いモデル(2500はトルクが大きくなりゆったりと走れる)、直4ガソリンはスズキの傑作機と言っても良いJ20Aでトルクこそ細いものの直4らしい機敏さがあり、ディーゼルは不評ではありましたが日常利用では過不足のない走らせ方ができました。
広島のマツダにとってスズキのある浜松はある意味東方。プロシードというブランドネームは、ラテン語の「~に由来する」とか「もたらす」「前進する」「継続する」などの意味を持ちますが、「東方からもたらされたもの」という意味合いこそが、プロシードレバンテの素顔だったのかもしれません。
あっ、二十年めと言えば、Xー90もそうなんですが、それはまたいずれ。